ECサイトへの3Dモデル導入には、消費者の購入意欲を掻き立てたり、返品リスクを減らしたりといった効果が期待できます。
この記事では、3Dモデルとは何か、ECサイトへの3Dモデル導入のメリットや方法、費用相場について解説します。導入事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
3Dモデルとは
ECストアにおける「3Dモデル」とは、商品を立体的に再現し、サイト訪問者がその商品を自由に回転させ、あらゆる角度から確認できるデジタルデータです。従来の静止画像や動画に比べて、商品の形状や質感、サイズ感を直感的に伝えられるため、年々3Dモデルを導入するECストアが増えています。
3Dモデルの導入で得られるメリット
ECサイトに3Dモデルを導入する最大のメリットは、ユーザーが商品の形状や質感を多角的にイメージでき、購入前の不安を大きく減らせることです。
ECサイトでは、テキストや画像によって商品の特徴や仕様を伝えますが、実物を手に取れないため、「イメージ通りの商品が届くのか」という不安が生まれやすいのが実情です。静止画像だけでは、商品の形状や質感、細部のディテールまでは伝えきれず、それが購入の迷いにつながることもあります。
その点、3Dモデルを活用すれば、ユーザーは商品を自由に回転させ、あらゆる角度から細部を確認できます。実物に近い視覚体験を提供することで、商品理解が深まり、商品ページの最適化につながります。
さらに、実物をより具体的にイメージできる情報を提供することで、購買意欲を掻き立て商品ページのコンバージョン改善につながります。さらに、購入後の「イメージ違い」を防ぎ、返品リスクを減らす効果もあります。返品リスクの減少は、梱包・発送・問い合わせ対応といったECの返品対応作業の削減につながるため、結果的に業務効率化にも貢献します。

3DレンダリングとECサイトへの導入方法
ECサイトで使用する3Dモデルは、商品を複数の角度から撮影して生成する方法と、専用の3Dモデリングソフトを使って一から制作する方法があります。作成した3Dモデルに質感や照明などを設定し、必要に応じてレンダリングやAR表示の設定を行います。
1. 商品情報を収集する
まず、商品の寸法、素材、色、形状、デザインなど、3Dモデルの制作に必要な情報を集めます。
たとえばスニーカーの3Dモデルを制作する場合は、商品の正確な寸法に加えて、生地、靴ひも、クッション部分の素材、配色、ロゴの位置などを確認する必要があります。商品の仕様を詳しく把握することで、実物に近い3Dモデルを制作できます。
2. 3Dモデルを作成する
3Dモデルを作成する主な方法には、3Dモデリングソフトを使用する方法と、商品の写真からモデルを生成するフォトグラメトリがあります。
3Dモデリングソフトを使用する場合は、Autodesk Maya、Blender(英語)、SolidWorksなどを使って商品の形状を立体的に再現します。ポリゴンモデリング(相互接続された2D形状から3Dオブジェクトの表面を作成する)やNURBS(数学的モデリングを用いて滑らかな曲線や曲面を生成する手法)といった手法を用いて基本的な形状を作り、実物の寸法や細部に合わせて調整します。
フォトグラメトリを利用する場合は、商品をさまざまな角度から撮影し、複数の写真を専用のソフトやアプリに取り込んで3Dモデルを生成します。撮影には、カメラまたはスマートフォン、三脚、照明、テーブル、白い背景、レフ板、回転台などを使用します。
フォトグラメトリに対応するアプリの例には、以下があります。
3. テクスチャを設定する
作成した3Dモデルに色や素材の質感を加えます。この工程をテクスチャリングと呼びます。
商品の色を表現するテクスチャのほか、表面の凹凸や傷、光沢、反射などを設定することで、より実物に近い見た目に仕上げられます。
たとえば革製バッグの場合は、革の細かなシボや色の濃淡を加えることで、素材特有の質感を再現できます。
4. 照明を設定する
3D空間内に照明を配置し、商品の形状や特徴が伝わるように調整します。照明の方向、明るさ、色などを変更することで、立体感や素材感を表現できます。
たとえば屋外用家具を表示する場合は太陽光に近い明るい照明を使用し、室内に置かれた家具を表現する場合は、柔らかい照明を使ってリビングのような環境を再現できます。
5. カメラの位置を設定する
3Dソフト内に仮想カメラを配置し、商品を表示する角度を決めます。焦点距離、被写界深度、構図などを調整し、商品の特徴が伝わりやすい画像を作成します。
一つの3Dモデルに複数のカメラアングルを設定すれば、全体像だけでなく、細部を拡大した画像も作成できます。たとえばスマートフォンの場合は、商品全体を見せる画像に加え、カメラレンズなどの細部を拡大した画像を制作できます。
6. レンダリングする
設定した3Dモデル、テクスチャ、照明、カメラの情報をもとに、2D画像を生成します。この処理が3Dレンダリングです。
レンダリングにかかる時間は、商品の形状、テクスチャの細かさ、照明の設定、出力する画像の品質などによって異なります。複雑なモデルや高品質な画像の場合は、処理に数時間かかることもあります。
7. 画像を仕上げる
レンダリング後は、色、明るさ、コントラストなどを調整します。必要に応じて背景写真と合成したり、広告用の文字やグラフィックを追加したりすることもできます。
たとえば金属製の腕時計では、文字盤の反射を強調したり、ベルトのハイライトを調整したりすることで、高級感のある画像に仕上げられます。
8. ARに対応するファイル形式で書き出す
作成した3Dモデルを商品ページでAR表示する場合は、使用する端末や環境に対応したファイル形式で書き出します。
主に使用されるファイル形式は以下の通りです。
- USDZ(iOS向け)
- GLB・GLTF(AndroidやWebAR向け)
多くの3Dモデル作成アプリは、これらの形式で書き出すことができます。
9. 商品ページに3DモデルやAR表示を組み込む
最後に、3Dモデルを表示できるビューアを用意し、商品ページに組み込みます。外部のAR表示サービスを利用する場合は、発行された専用URLを商品ページのARボタンなどに設定します。
Shopifyでは、対応する3Dモデルを商品メディアとして登録できます。対応テーマや端末では、ユーザーが商品を回転させて確認したり、ARを利用して自分の空間に商品を表示したりできるようになります。
Shopify AR
Shopfy ARとは、ECプラットフォームShopifyが提供するAR表示の機能で、Shopifyでオンラインストアを開設した場合に利用可能です。
Shopify ARを活用すれば、これまで解説してきた複雑な手順を大幅に簡略化できます。作成した3Dモデルを商品に登録するだけで、AR表示が自動で商品ページに反映されるため、専門知識や追加の作業はほとんど必要ありません。複数のツールを行き来する必要がないため、導入にかかる時間と手間を削減でき、スピーディーに3Dモデルの商品ページを公開できます。AR体験をもっと手軽に始めたいEC事業者にとって、Shopify ARは非常に心強い選択肢です。

3Dモデル作成を委託する場合の相場
キャラクター商品などの人型3Dモデル制作にかかる費用は、一般的に5万〜100万円程度が目安です。人の形状を忠実に再現するモデルは、細かな造形や調整が必要になるため、他の製品モデルに比べて高額になりやすい傾向があります。
また、費用は制作に求めるクオリティ、修正対応などのアフターサポート内容によって大きく変わります。さらに、アニメーションや骨格(リギング)設定を追加する場合は、別途費用が発生する点にも留意が必要です。
人型以外の3Dモデルの制作費用は、一般的に1万〜50万円程度が目安です。モデルの形状や精度によって、費用は大きく変動します。
3Dモデル導入の事例
トンボ鉛筆
トンボ鉛筆が発売しているプロフェッショナル向けグラフィックマーカー「ABTデュアルブラッシュペン」には、スペシャルサイトが開設されており、3Dでカラーチャートを確認できます。3Dモデルを用いることで、「色相・明度・彩度」という色の三属性を立体的なチャートとして一度に俯瞰できるのが大きな特徴です。
2Dの静止画では一目で把握しきれない色彩チャートを3Dで表現することにより、色について専門性の高い仕事をしている顧客に対し、これまでにない色選びの利便性を提供しています。
RIMOWA(リモワ)
RIMOWAは、ドイツ発の高級スーツケースブランドです。ECサイトでは、商品ページの「3Dビューを見る」をクリックすると、ポップアップ画面が現れ、「ARビュー」をクリックするとあらゆる角度からスーツケースを確認できます。さらに、商品の気になるポイントをクリックすると、そのパーツが持つ機能の詳細が表示されるようになっています。

まとめ
3DモデルをECサイトに導入することで、ユーザーは商品を立体的に確認できるようになり、より実物に近い体験ができます。これにより、購入前の不安を払拭し、購買意欲を掻き立てたり、返品リスクを減らしたりする効果が期待できます。一方で、一般的な導入方法では、撮影・3Dモデル作成・AR表示・ページへの組み込みといった複数の工程が必要となるため、初心者や個人事業主にとってはハードルが高く感じられることもあります。
その点、Shopify ARを活用すれば、3Dモデルを登録するだけで商品ページでAR体験を実現できるため、複雑な設定や複数ツールの管理は必要ありません。Shopifyは、初心者でも簡単にECサイトを立ち上げられるプラットフォームであり、無料体験から始められるのも大きな魅力です。EC運営やAR活用に初めて挑戦するアントレプレナーでも、無理なく導入できる環境が整っています。3DモデルやARをこれから取り入れたい起業家にとって、Shopify ARは最短ルートで成果を出すための頼もしいツールと言えるでしょう。
ECストアへの3Dモデル導入に関するよくある質問
3Dモデル制作を外注すると費用はいくらかかる?
3Dモデル制作を外注するとかかる費用は、キャラクター商品などの人型の商品の場合は一般的に5〜100万円程度、人型以外の商品の場合は、一般的に1〜50万円程度が目安です。
求めるクオリティ、修正対応などのアフターサポート内容によって大きく変わります。
3Dモデルを作成できるフォトグラメトリのおすすめアプリは?
複数の写真から3Dモデルを作成できるフォトグラメトリのアプリには、さまざまなものがありますが、代表的なものとして以下が挙げられます。ここに紹介するアプリは、どれも日本語で操作でき、無料で始められます。
ECストアに3Dモデルを導入する方法は?
ECストアに3Dモデルを導入するには、以下の手順を踏みます。
- 商品撮影
- 3Dモデルを作成し、USDZ( iOS向け)形式、またはGLB / GLTF(Android / WebAR向け)形式で書き出す
- AR表示させるための埋め込み用URLやタグを発行
- ARボタンを商品ページに設置し、AR表示させるためのURLやタグを埋め込む
ECストアに3Dモデルを導入するための簡単な方法は?
ECストアに3Dモデルを簡単に導入するには、Shopify ARを利用する方法があります。Shopify ARを使えば、作成した3Dモデルを登録するだけで商品ページ上でAR体験を実現できます。複雑な設定や複数ツールの管理の手間を省くことができます。




