小売事業者にとって、広い顧客層へ効率的に商品を届ける手段として、ECの重要性が年々高まっています。ECサイトには自社サイト型やモール型などさまざまな形態がありますが、その中でもAmazonは日本国内だけでなく世界的にも大きな存在感を持つプラットフォームです。
ただし、Amazonに出品すれば売上や利益がすぐに得られるとは限りません。競争環境や手数料、広告費などのコスト構造を理解しないまま出店すると、期待した成果が得られないこともあります。
本記事では、Amazon出店で利益を出すために、必要な費用や販売方法を整理するとともに、制限とデメリットを解説します。

Amazonの販売者はどれくらい稼いでいるか
Amazonで商品を販売する事業者の平均売上高は、年間1,000万円以上とされています。Amazonが2022年に公開したレポート「Amazon Economic & Community Impact Report for Japan」によると、日本のAmazonマーケットプレイスで商品を販売する事業者数は、約15万社と報告されました。2025年には、約18万社まで増加しています。
ECビジネスの収益は、取り扱う商品カテゴリー、販売価格、マーケティング方法などが影響します。Amazonは巨大な市場を持つため、売上規模の大きい販売者も存在しますが、競争が激しく、安定した売上を確保するには継続的な運営努力が必要です。
Amazonでの販売は実際に利益が出るのか
Amazonで利益を出せるかどうかは、商品の原価と販売価格、そして各種コストを含めた収益構造に左右されます。目標どおりの利益を得るには、ECならではのコスト削減メリットと、Amazon特有の費用を比較し、収益性を見極める必要があります。EC事業の営業利益率の目標は10%以上が目安となります。
Amazonでは出品プランの利用料、販売手数料、FBA(Fulfillment by Amazon)の利用料、広告費などが発生します。FBAは、商品の保管・配送・カスタマーサービスをAmazonが代行するフルフィルメントサービスです。物流にかかる業務負担を軽減できますが、配送ごとに手数料がかかります。利益を確保するには、これらのコストを見込んだ価格設定が重要です。

Amazonでの販売のメリットとデメリット
メリット
1. 集客しやすい
Amazonは世界最大級のECモールであり、日本でも多くの消費者が日常的に利用しています。商品を探す目的でユーザーが訪れるため、新たに自社ECサイトを立ち上げる場合と比べて、初期段階から一定の集客が見込める点が大きな特徴です。
2. 運営しやすい
- アカウント作成だけで開始:アカウント登録で始められ、新規ECサイトの構築が不要
- FBAが利用可能:商品の保管や配送、カスタマーサポートなどをAmazonが代行
- 入金管理が簡単:売上金の回収や決済処理をAmazonが管理
3. 海外へ商品を販売できる
Amazonは世界各国でマーケットプレイスを展開しており、日本の販売事業者でも海外のAmazonサイトを通じて商品を販売できます。国際配送や物流サービスを利用することで、国内市場だけでなく、グローバル市場への展開を検討できる点も魅力の一つです。
デメリット
1. 価格競争が起こりやすい
購入者はサイト上で価格を簡単に比較できるため、同じ商品を扱う販売者同士で価格競争が起こりやすくなります。Amazonでは、同一商品に複数の販売者が出品する「相乗り出品」が一般的です。差別化が難しい商品は、価格を下げないと売れにくい状況になりやすく、利益率が圧迫される要因になります。
2. ブランディングしにくい
Amazonでは商品ページが共通化されているため、自社サイトのように店舗デザインを自由に表現しづらいデメリットがあります。商品ページの情報や構成はAmazonのフォーマットに沿っているため、ブランドストーリーや独自の販売体験を打ち出したい事業者は注意が必要です。
3. 担当者によるサポートが弱い
Amazonでは、専任のコンサルタントが常に運営を支援する仕組みはありません。出品者向けのヘルプやサポート窓口は用意されていますが、商品ページの改善や販売戦略を自社で判断する場面が多く、運営ノウハウが求められるケースがあります。
4. 月額料金や販売手数料が発生する
Amazonで販売する場合、出品プランの月額料金や販売手数料などのコストが発生します。さらに、FBAを利用する場合の保管料や配送費、広告費などが加わると、実際の販売コストは想定より大きくなることもあります。価格設定や利益計算を行う際には十分な検討が必要です。
5. リピーターやファンを獲得しにくい
Amazonでは、購入者の顧客データが出品者に直接共有されません。自社ECサイトと比べて、会員制度やメールマーケティングなどのCRM施策を打ちづらい点がデメリットです。リピーターやブランドのファンを育成し、長期的なブランド構築を重視する事業者にとっては、この点が課題となります。

Amazonで販売できるもの
法律やAmazonのポリシーに違反しない商品であれば、マーケットプレイスで販売可能です。
商品は以下のカテゴリー別に販売されています。
- DVD・ミュージック・ゲーム
- 家電・カメラ・AV機器
- パソコン・オフィス用品
- ホーム&キッチン・ペット・DIY
- 食品・飲料・お酒
- ドラッグストア・ビューティー
- ベビー・おもちゃ・ホビー
- 服・シューズ・バッグ・腕時計
- スポーツ&アウトドア
- 車&バイク・産業・研究開発
- 本・コミック・雑誌
次のカテゴリーは新商品を出品する前に承認が必要です。
- カー&バイク用品
- ビューティ
- 服&ファッション小物
- 食品&飲料
- ヘルスケア&パーソナルケア
- ジュエリー
- 旅行かばん&トラベル用品
- シューズ・ハンドバッグ・サングラス
- 腕時計
Amazonで販売できないもの
各商品カテゴリーごとに販売できない商品が定められています。以下はその一例です。
- 賞味期限、消費期限が切れた食品
- 生きている生物の大半(ペットなど)
- 未承認の医薬部外品・化粧品
- 商品券、切手、記念貨幣などの現金同等品
- 開錠道具、マスターキー
- タバコ、電子タバコ、無煙タバコ
このほか、法令や安全性基準に違反する商品の出品は禁じられています。
FBAを利用する場合には、物流上の理由から取り扱えない商品もあります。
- 化学製品
- 危険物
- 室温で保管できない商品
- 他の商品に影響を及ぼす恐れのある磁性商品
商品の出品を検討する際は、AmazonのポリシーとFBAの条件をあらかじめ確認してください。

Amazonでの販売方法
販売したい商品を決める
販売したい商品を決めるには、トレンドや市場のニーズを把握する必要があります。単に利益の出そうな商品を探すのではなく、独自の視点や商品選定の方針を持つことが重要です。例えば、以下のような方法が商品選定の参考になります。
- Amazonのベストセラーランキングを確認する
- 検索キーワードの需要を調べる
- レビューを分析する
Amazon販売では、次のようなビジネスモデルをもとに商品を選ぶ方法もあります。
- リテールアービトラージ:商品を安く仕入れ、より高い価格で販売して差額から利益を得る
- ホワイトラベル販売:既存のジェネリック商品に自社ブランドのロゴやデザインを付けて販売する
- ドロップシッピング:在庫を持たず、注文が入った時点でメーカーや卸売業者から商品を発送してもらう
- 自社製品の販売: 自社で企画・製造した商品をAmazonで販売する
必須となる販売コストを理解する
Amazonで商品を販売する際、出品プラン料金と販売手数料が発生します。
出品プラン料金
出品プラン料金には、以下の2種類があります。
- 小口出品:商品が売れるたびに 1商品あたり100円の基本成約料が発生
- 大口出品:月額4,900円の利用料
販売手数料
Amazonで商品が売れると、販売手数料が発生します。手数料率は商品カテゴリーによって異なりますが、一般的には商品価格の5%〜15%程度に設定されています。
オプション費用の利用方針を決める
以下の費用は任意に選択できます。工数削減や販売促進のニーズに応じて利用するかどうか決定してください。
FBA(物流代行)手数料
FBAを利用する場合は、商品のサイズや重量に応じて配送代行手数料が発生します。例えば、SDカードのような1,000円以下の小型の商品では、222円の配送手数料がかかります
広告費用
Amazonでは、以下のような広告が利用でき、クリック課金(CPC)方式で広告費用が発生します。
- スポンサープロダクト広告:商品単位の広告。検索結果や商品ページに表示される
- スポンサーブランド広告:ブランド訴求型の広告。ロゴや複数商品をまとめて表示できる
- スポンサーディスプレイ広告:外部サイトに表示できる広告。閲覧・購買データをもとに配信される。
その他
在庫保管料や長期在庫手数料など、状況に応じて追加の費用が発生する場合があります。最新の料金体系や詳細については、Amazonの公式ページを確認してください。
Amazonセラーセントラルを活用する
Amazonセラーセントラルは、販売者用の管理画面です。出品商品の登録や在庫管理、注文処理、売上データの確認など、販売に関する操作をこのインターフェースから行います。
Amazonで販売を始める際は、セラーセントラルの基本的な操作に慣れておくことが重要です。販売ノウハウを学べる「Amazon出品大学」や、最新情報を紹介する「販売パートナーブログ」などの学習コンテンツを活用して、運営方法の理解を深めましょう。
フルフィルメントオプションを選択する
Amazonでは、注文の保管・梱包・配送などの物流業務(フルフィルメント)をどの方法で行うか選択できます。主な方法は次の5種類です。
- フルフィルメントby Amazon(FBA):商品の保管から発送、カスタマーサービスをAmazonが代行
- サードパーティーフルフィルメント:商品の保管からピッキング、梱包、発送まで、物流作業を外部に委託
- マルチチャネルフルフィルメント:複数の販売チャネルからの注文を、システム上で一元管理して配送可能
- 自社フルフィルメント:販売事業者が自社で製品の受注から発送までの一連の物流業務を実施
- ドロップシッピング:第三者ドロップシッパーが販売事業者に代わって、製品の製造、保管、配送まで実施
物流業務をアウトソーシングしたい場合は、FBAやサードパーティーフルフィルメントが選択できます。マルチチャネル販売したい事業者向けのオプションも用意されています。ドロップシッピングは、物流にとどまらず、製造も含めて外部委託する方式です。
魅力的な商品ページを作成する
購入者が商品の特徴を理解しやすいように、次のポイントを意識しましょう。
- 商品の特徴を整理する:主な特徴やメリットを箇条書きでまとめると、購入者は内容を素早く把握できます
- 利用シーンを説明する:購入後のイメージが持て、購買意欲が向上します
- 高品質な画像を掲載する:商品の細部まで確認できる画像は、購入者の安心感につながります
- 複数の画像を掲載する:使用例や機能を説明する画像は、商品の理解を深めます

Amazonマーケットプレイスで販売するために必要なもの
Amazonマーケットプレイスでの販売は比較的始めやすいといわれますが、実際には一定の資金や時間、書類の準備、分析ツールの活用などが必要です。これらの条件を十分に理解せずに出店すると、想定した成果が出にくくなる場合があります。
資金
Amazon販売の初期段階では、在庫を確保するための仕入れ費用と、マーケットプレイスに出品するための登録料を資金として見込んでおきましょう。FBA利用料や送料などの定常費用は、売上金からまかなえますが、入金までの期間に負担が発生する場合もあるため、キャッシュフローに注意が必要です。また、商品を販促するため、広告を掲載する費用も事前に見込んでおく必要があります。
時間
Amazonで販売を開始してから安定した売上や利益を上げるまでには、数か月程度を見込むのが一般的です。アカウント開設や本人確認、商品登録、FBA納品などの準備には、数日から数週間程度かかる場合があるため注意しておきましょう。さらに、食品や美容関連など一部のカテゴリーでは、出品審査に時間がかかることもあり、想定より販売開始が遅れるケースもあります。
書類
Amazonマーケットプレイスに出店する際は、本人確認や事業者情報の提出が求められます。法人と個人事業主では必要書類が一部異なります。
法人の場合
- 法人代表者または担当者の本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
- 法人の銀行口座情報
- 有効なクレジットカード
- 法人の登記情報や事業所所在地
- 電話番号
- 場合により追加の事業確認書類
個人事業主の場合
- 本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
- 銀行口座情報
- 有効なクレジットカード
- 住所情報
- 電話番号
これらの情報はアカウント開設時の本人確認で使用されます。
分析ツール
Amazonでは商品数や競合が多いため、価格や需要を分析するツールも検討しましょう。例えば次のようなツールがあります。
これらのツールを活用することで、競合商品の販売状況や市場のトレンドも分析できます。競合他社を把握したうえで、自社の価格帯や商品ページを改善し、ポジショニングを明確にすることが重要です。
まとめ
Amazonマーケットプレイスは世界最大級のECプラットフォームであり、多くの事業者にとって魅力的な販売チャネルです。大きな集客力があり、出品の仕組みや物流サービス(FBA)なども整備されているため、ECビジネスを始めやすい点が大きな特徴です。
一方で、商品比較が容易なため価格競争に巻き込まれやすく、ブランドの個性を打ち出しにくいという構造的な課題があります。また、販売手数料やFBA関連費用、広告費などのコストが積み重なることで、売上があっても利益が残りにくいケースも少なくありません。
さらに、出品方法やフルフィルメントの選択、必要書類の提出、商品ページの作成など、Amazon独自の制度や運営方法を理解することも重要です。準備不足のまま出店すると、思うような成果が得られない場合もあります。
Amazon販売を始める際は、デメリットとなる仕組みやコストを十分に把握したうえで、販売戦略を検討しましょう。
Amazonでの販売に関するFAQ
Amazonでの販売は本当に簡単?
Amazonでは出品の仕組みや物流サービス(FBA)などが整備されているため、商品登録や販売の開始自体は比較的容易です。しかし、実際に売上を伸ばすには競合との差別化や広告運用、価格設定などの工夫が必要になります。商品を登録しただけでは埋もれてしまうことも多く、安定した販売を実現するには継続的な運営と改善が求められます。
Amazonでの販売は多くの労力がかかる?
Amazonでの販売に必要な作業量は、取り扱う商品や運営方法によって大きく異なります。FBAを利用すれば保管や発送、カスタマーサービスの多くをAmazonに任せることができますが、商品ページの作成、在庫管理、価格調整、広告運用などは販売者自身が行う必要があります。販売を拡大するほど運営作業も増えるため、一定の時間を確保することが重要です。
Amazonでの販売の成功率はどのくらい?
Amazon販売の成功率を正確に示す公式統計はありませんが、多くの販売者が一定の収益を上げています。EC向けの物流・サプライチェーン会社Forcegetの調査(英語)によると、開始1年以内にFBA販売者の6割近くが利益を出したと報告されています。
Amazon FBAは副業になる?
Amazon FBAは副業として利用されることも多い販売方法です。FBAでは商品の保管や発送、返品対応などをAmazonが代行するため、物流業務にかかる手間を削減できます。ただし、商品の選定や在庫管理、広告運用などは販売者が行う必要があり、安定した収益を得るには継続的な運営と分析が欠かせません。
文:Norio Aoki





