はじめに
「3社から見積もりを取ったのに、内訳の切り方がバラバラで横並びにできない」
「費目に並ぶ言葉の意味が、正直よく分からない」「
相場を知らないままベンダーと交渉するのは怖い」
ECサイトを新しく立ち上げる、もしくは既存ECのリプレイス・リニューアルを検討する担当者の多くが、見積もりの取得・比較で同じ壁にぶつかります。
ECサイトの見積もりは、コーポレートサイトの制作見積もりとは事情が違います。
決済、在庫、物流連携、セキュリティといった検討項目が多く、費目の切り出し方もベンダーごとに揺れます。
総額だけ見て発注先を決めると、運用が始まってから追加見積もりが頻発したり、想定していた機能が含まれていなかったりして、当初予算を超過するケースも珍しくありません。
本記事では、見積もり取得前の準備、RFP(提案依頼書)の書き方、構築方法別の費用相場、見積もり書の費目の読み解き方、複数社比較の観点、見積もりが膨らむ要因、発注後の失敗パターン、規模・フェーズ別の予算組みフレームまで、担当者の実務目線で網羅的に解説します。
目次
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ECサイトの見積もりとは(基本概念と特殊性)
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見積もりを依頼する前に準備すべき7つの情報
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RFP(提案依頼書)の書き方と必須項目
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構築方法別のECサイト見積もり相場
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ECサイト見積もり書の主要費目と読み解き方
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複数社の見積もりを比較する5つの観点
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ECサイトの見積もりが膨らむ/抑えられる要因
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見積もり後の発注で陥りがちな失敗パターン
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規模・フェーズ別の現実的な予算組みフレーム
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まとめ
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ECサイトの見積もりとは(基本概念と特殊性)
ECサイトの見積もりとは、ECサイト(インターネット上で商品やサービスを販売するWebサイト)を新規構築、もしくはリプレイス・リニューアルする際に、ベンダーや制作会社が提示する費用見積もりを指します。
多くの場合、初期構築費用、ランニング費用、オプション費用の3つに分かれます。
ECサイトの見積もりに含まれる範囲
見積もりの対象は、サイト本体の設計・デザイン・開発に留まりません。
決済の組み込み、在庫管理、物流連携、CRM連携、セキュリティ対策、運用保守、管理画面の使い方研修まで、対象範囲は想像以上に広く取られます。
具体的な対象は、企画・要件定義、サイト設計・情報設計、システム設計(DB、API連携)、デザイン(PC/モバイル)、フロントエンド/バックエンド実装、決済機能の組み込み、物流・配送機能の連携、セキュリティ対策(PCI DSS対応等)、テスト・品質保証、環境構築(ドメイン、SSL、サーバ等)、運用・保守、管理画面のトレーニングなどです。
コーポレートサイト制作との違い
ECサイトの見積もりが複雑になる最大の理由は、決済・在庫・物流・セキュリティといった「お金と商品が動く」要件が必ず絡む点です。
コーポレートサイトは情報提示が中心ですが、ECサイトでは購入トランザクションが発生します。
決済代行サービスとの接続、PCI DSS(クレジットカード業界のセキュリティ基準)への対応、不正注文対策、注文情報の基幹システムや配送会社への連携など、考慮すべき非機能要件は大きく増えます。
結果として、同じ「企画費」「設計費」でも、ECサイトのほうが工数・金額が大きく振れます。
「初期費用」と「ランニング費用」を分けて見るべき理由
ECサイトの費用構造で見落とされがちなのが、ランニング費用です。
運用フェーズで継続的に発生する費用を指し、商品追加、特集ページ制作、決済手段の追加、UI改善、セキュリティアップデート、サーバ運用、保守対応など、リリース後に積み上がるコストが含まれます。
ベンダーから出てくる見積もり書は、初期費用に重点が置かれがちで、運用フェーズの費用が「月額○万円〜」とぼかして書かれているケースも目立ちます。
比較検討時には、初期費用とランニング費用を分け、3年・5年といった中長期で総コストを試算しましょう。
見積もりを依頼する前に準備すべき7つの情報
ECサイトの見積もりを精度高く取るためには、依頼前の準備が肝心です。
「とりあえずECサイトを作りたいので見積もりをお願いします」と丸投げで依頼すると、ベンダー側はリスクを多めに織り込むため、金額が割高になるか、抽象的すぎて比較できない見積もりが返ってきます。
ここでは、見積もり依頼前に整理しておきたい7つの情報を解説します。
EC構築・EC制作いずれの見積もり依頼でも共通する内容です。
1. プロジェクトの目的・KPI
「なぜECサイトを構築・リプレイスするのか」を文章化します。
新規事業の立ち上げ、既存EC事業のスケール、ECシステムの老朽化対応、業務効率化、グローバル展開など、目的が変わればベンダーが推奨するプラットフォームや構築方法も変わります。
3年後の売上目標、月商目標、CVR(コンバージョン率)目標といったKPIも整理しておくと、規模感のずれた提案を受け取りにくくなります。
2. 現状の事業情報
ベンダーが精度の高い見積もりを出すには、事業のサイズ感の共有が欠かせません。
最低限、年商・月商、取扱SKU数(商品の種類数)、想定アクセス数(PV/UU)、想定ピークアクセス(セール時など)、顧客セグメント(BtoC/BtoB/DtoC/越境EC等)、主要なチャネル(自社EC/モール/実店舗)の情報は揃えておきましょう。
3. 必須機能と非機能要件
ECサイトに求める機能要件と、非機能要件(性能・セキュリティ・運用面の要件)を整理します。
-
機能要件の例:
決済手段(クレジットカード、コンビニ決済、PayPay、Amazon Pay、楽天Pay、後払い、銀行振込、代引き等) -
配送方法(送料設定、配送業者連携)
-
在庫管理(複数倉庫、リアルタイム在庫連携)
-
ポイント・クーポン機能
-
会員管理・CRM連携、多言語・多通貨対応(越境ECの場合)
-
定期購入・サブスクリプション
-
BtoB機能(卸売、企業アカウント管理、得意先別価格)
非機能要件の例
-
レスポンス速度(ページ表示速度の目標)
-
同時アクセスへの耐性、セキュリティレベル(PCI DSS準拠、WAF、不正検知)
-
稼働率(SLAの目安)
-
対応ブラウザ/デバイス
-
データバックアップ要件
4. 既存システム情報
すでに利用している基幹システム、CRM、WMS(倉庫管理システム)、CDP、MAツール、会計システム等との連携要件を洗い出します。
連携の有無、連携方法(API/CSV/手動)、連携先のベンダー名、現行システムの稼働状況は、見積もり金額に直撃します。
5. デザイン要件と参考サイト
ブランドのトーン&マナー、参考にしたいECサイトの例(3〜5サイト程度)、避けたいデザインの例、既存ブランドガイドラインの有無を整理します。
参考サイトを共有する際は、何を真似たいのか(雰囲気、UI構造、配色等)を一段ブレイクダウンして言語化しておくと、デザインの方向性がぶれません。
6. 予算上限とスケジュール
予算には上限を明示します。「予算は未定」と伝えると、ベンダーは無難に高めの見積もりを出すか、安すぎてスコープが合わない見積もりを返してきます。
最低限「初期費用◯万円以内」「月額ランニング◯万円以内」のレンジを提示しましょう。
スケジュールも、希望リリース日と、その背景にある事業上の理由(新商品の発売、繁忙期前など)をセットで共有します。
短納期は割増料金の要因になるため、無理のないスケジュール設定が望ましいでしょう。
7. 体制・運用負荷の前提
ECサイトのリリース後、運用にどのリソースを割けるかを整理します。
整理すべき項目は、下記4点です。
-
自社EC担当者の人数
-
スキル内製したい範囲(商品登録、ページ制作、配信業務等)
-
外注したい範囲(保守、UI改修、撮影、コンテンツ制作等)
-
運用フェーズの社内体制
社内でカバーできる範囲が広いほど、構築・運用費用は抑えやすくなります。
リソースが足りない場合は、運用保守の手厚いベンダー・プラットフォームを選ぶ方が現実的です。
RFP(提案依頼書)の書き方と必須項目
ECサイトの見積もりを複数社から取る際、フェアな比較を可能にするのがRFP(Request for Proposal、提案依頼書)です。
前章の7つの情報を文書化したものに、提案依頼事項と評価基準を加えた書面と考えてください。
RFPを作るメリット
RFPを作るメリットは大きく3つです。
-
横並び比較が可能になる(全社に同条件で依頼するため、提案内容と金額をフラットに比べられる)
-
丸投げによる割高見積もりを防げる(要件が明確なため、ベンダー側がリスクバッファを多めに積まなくて済む)
-
発注後のトラブルを抑制できる(要件凍結のベースになり、「言った/言わない」の応酬を避けやすい)
RFPに含めるべき項目
ECサイト構築のRFPに含めたい主要項目は以下の通りです。
-
会社・事業概要:会社情報、事業内容、組織図、現行ECの状況(あれば)
-
プロジェクトの背景・目的:なぜプロジェクトを行うのか、解決したい課題
-
プロジェクトのスコープ:提案対象範囲(構築のみ/構築+運用/戦略策定含む等)
-
機能要件一覧:優先順位付き
-
非機能要件一覧:性能・セキュリティ・運用要件
-
既存システムの構成:連携先システム、現行ECの構成図
-
想定する事業規模:年商、月商、SKU数、アクセス数
-
予算とスケジュール:上限予算、希望リリース日、マイルストーン
-
プロジェクト体制:自社の体制、ベンダー側に求める体制
-
提出物・提出形式:提案書、見積もり書、参考実績、回答期限
-
評価基準:選定基準(金額/提案内容/実績/体制/サポート)
機能要件の優先順位の付け方
機能要件は数十項目に及ぶのが一般的です。
すべてを必須にすると見積もりが膨らみすぎるので、4段階で優先順位を付けるのが現実的です。
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優先度 |
内容 |
|---|---|
|
A:必須 |
リリース時に絶対に必要な機能 |
|
B:重要 |
リリース時にあるべきだが、フェーズ分割は可能な機能 |
|
C:要望 |
あれば嬉しい機能 |
|
D:将来 |
中長期で実現したい機能、予算内なら提案を希望 |
優先度を明示しておくと、ベンダー側は段階的な構築プラン(フェーズ1/フェーズ2 等)を組みやすくなります。
RFPの分量はWord/PDFで10〜30ページ程度が一般的で、短すぎても長すぎても回答品質が落ちる傾向があるため、要点を絞った情報量を意識しましょう。
構築方法別のECサイト見積もり相場
ECサイトの見積もり金額は、構築方法によって桁が変わります。代表的な構築方法ごとに、初期費用・月額費用・構築期間の相場感を整理します。
全体相場早見表
|
構築タイプ |
初期費用相場 |
月額費用相場 |
構築期間 |
対象規模 |
|---|---|---|---|---|
|
ASP・SaaS型 |
0〜10万円 |
0円〜数万円〜 |
即日〜2ヶ月 |
個人〜中規模、規模により大規模も対応 |
|
オープンソース型 |
50〜200万円 |
サーバ・保守費 月数万円〜 |
1〜4ヶ月 |
中小〜中規模 |
|
パッケージ型 |
300〜1,500万円 |
10万円〜数十万円 |
4〜8ヶ月 |
中〜大規模 |
|
フルスクラッチ型 |
3,000万円〜 |
数十万円〜 |
6〜18ヶ月以上 |
大規模・エンタープライズ |
|
モール型 |
出店料による(数万円〜) |
月額利用料+ロイヤリティ |
即日〜 |
すべて |
出典:経済産業省『電子商取引に関する市場調査』、Web幹事、Salesforceブログ、各社公式サイト等を基に整理(2024〜2025年時点)
各構築方法の特徴と費用感を、フラットに見ていきます。
ASP・SaaS型
クラウド上で提供されるECプラットフォームを利用する方法です。
サーバ管理やセキュリティアップデートが提供元で完結するため、運用負荷が低く、構築スピードも速いのが特徴です。
代表的なサービス例
-
BASE:個人〜小規模向け、初期費用0円・月額0円〜
-
STORES:個人〜中小規模向け、初期費用0円・月額0円〜2,980円
-
カラーミーショップ:個人〜中小規模向け、初期費用0円〜3,300円・月額0円〜
-
MakeShop:中小〜中規模向け、初期費用11,000円〜・月額11,000円〜
-
Shopify:個人〜エンタープライズ対応、初期費用0円・月額$29〜(Basic)/要見積もり(Plus)
-
futureshop:中規模以上向け、初期費用22,000円・月額22,000円〜
各社の月額費用にはプラットフォーム利用料が含まれますが、決済手数料(クレジットカードで3.4〜5%程度)は別途発生します。
決済手数料はトランザクション量に応じて大きく動くため、月商規模を見込んで試算してください。
向いている企業の特性:
-
ITリソースが限られている
-
スピード重視で立ち上げたい
-
標準的なEC機能で十分
-
段階的にスケールアップしたい
オープンソース型
EC-CUBE、WooCommerce、Magento(オープンソース版)など、ソースコードが公開されているECシステムを自社サーバ上に構築する方法です。
代表的なサービス例
-
EC-CUBE:日本製、無料、構築費用50〜200万円(外注の場合)、サーバ費用月5,000〜3万円、保守費用月3〜15万円(外注の場合)
-
WooCommerce:WordPress用ECプラグイン、プラグイン無料、構築費用30〜150万円
-
Magento(Adobe Commerce):オープンソース版は無料、Commerce版は要見積もり、構築費用数百万〜数千万円
ライセンス費用は無料か安価ですが、構築・運用には開発リソースが要ります。
カスタマイズ性は高い反面、セキュリティアップデートやサーバ運用の責任は自社(または委託先)に残ります。
向いている企業の特性:
-
独自のカスタマイズを多数行いたい
-
開発リソースを社内またはパートナーで確保できる
-
ライセンス費用を抑えたい
パッケージ型
ベンダーが提供するECパッケージを基盤に、要件に応じてカスタマイズを加える構築方法です。
代表的なサービス例
-
ecbeing:国内シェア上位の中〜大規模向けパッケージ、初期費用300万円〜
-
ebisumart:クラウド型パッケージ、自動アップデート、初期費用300万円〜、月額10万円〜
-
SI Web Shopping:BtoB/BtoC両対応の大規模EC向け、要見積もり
-
Orange EC:パッケージ型、要見積もり
初期費用は数百万円から、構築期間は4〜8ヶ月が目安です。
標準機能が豊富で業務要件への適合度を高めやすい反面、初期投資と保守費用はそれなりにかかります。
向いている企業の特性:
-
中〜大規模のECを構築・リプレイスしたい
-
標準機能で多くの業務要件を満たしたい
-
ベンダーの保守・サポートを手厚く受けたい
フルスクラッチ型
すべてを独自開発する方法です。
初期費用は3,000万円〜、構築期間は6〜18ヶ月以上が一般的で、大規模ECやエンタープライズの基幹システムと深く絡むEC事業者で採用されます。
要件への柔軟性は最大ですが、コスト・期間も最大です。
モール型
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングといったショッピングモールに出店する方法です。
自社ECサイト構築とは別軸ですが、見積もり検討時に並列の比較対象になりやすいため補足します。
初期構築費用は低めですが、月額利用料・販売手数料・ロイヤリティは継続的に発生します。
集客力が高い反面、自社ブランドや顧客データ蓄積に制約があるため、多くの企業はモール型と自社ECを併用しています。
ECサイト見積もり書の主要費目と読み解き方
ベンダーから提示される見積もり書には、おおむね次の費目が並びます。
各費目の意味と、ベンダーごとに金額がブレやすい論点を整理します。
1. 企画・要件定義費
プロジェクトの目的整理、要件のヒアリング、機能要件・非機能要件の文書化を行う工程の費用です。
要件定義のミーティング回数、要件定義書の納品物、要件変更時の追加費用ルールを確認しておきます。
2. サイト設計・情報設計費
サイトマップ、ワイヤーフレーム、画面遷移図、IA(情報設計)の作成費用です。
ワイヤーフレームの粒度、対応デバイス、ページ数で金額が変動します。
3. システム設計費
データベース設計、API連携設計、外部システム連携設計の費用です。
基幹システム連携が複雑な場合に膨らみやすく、連携先システムの数、連携方式(REST API/SOAP/CSV/手動)、データ整合性の担保方法が論点になります。
4. デザイン費
PC/モバイルの各ページデザイン、ブランドガイドラインの整備、デザインカンプの制作費用です。
デザインするページ数、レビュー回数の上限、追加修正の単価で金額が動きます。
5. コーディング・実装費
フロントエンド(HTML/CSS/JavaScript)、バックエンド(サーバサイドロジック、API実装)の実装費用です。
エンジニアの人月単価(一般的に80〜150万円程度)、想定工数、テスト工程の含み方が論点になります。
6. 環境構築費
独自ドメインの取得、SSL証明書の発行、サーバの構築、CDNの設定、本番/ステージング環境の整備にかかる費用です。
サーバの種類(共用/専用/クラウド)、CDN導入の有無、冗長化レベルで金額が変わります。
7. テスト費
単体テスト、結合テスト、システムテスト、受入テスト(UAT)、負荷試験の費用です。
テストケース数、工程の段階数、自動化テストの有無、受入テストの支援範囲が論点となります。
8. 進行管理費(PM/PL/ディレクション費)
プロジェクトマネージャー、プロジェクトリーダー、ディレクターの工数費用で、多くの場合は開発費の15〜25%程度で見積もられます。
PMの稼働率、進捗会議の頻度、レポーティングの粒度が論点です。
9. 運用・保守費
リリース後の保守、障害対応、セキュリティアップデート、軽微な改修対応の費用です。
月額固定型・従量型・SLA連動型などのパターンがあり、対応範囲、対応時間帯、障害発生時のSLA、追加改修の人月単価で金額が大きく変動します。
10. 教育・トレーニング費
管理画面の操作研修、運用マニュアルの整備、社内向け勉強会の費用です。研修回数、対象人数、研修資料の作成範囲で金額が変動します。
費目ごとに「曖昧な見積もり」を避けるための質問例
見積もり書を受け取ったら、各費目について次のような質問を投げることで、ベンダー間の比較精度がぐっと上がります。
-
この費目には具体的にどの作業が含まれているか
-
成果物として何が納品されるか
-
想定工数(人日/人月)はどの程度か
-
追加要件が発生した場合の単価はいくらか
-
この費目の金額が大きく動く要因は何か
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複数社の見積もりを比較する5つの観点
ECサイトの見積もりを総額だけで判断すると、発注後に痛い目を見るリスクが残ります。複数社の見積もりを横並びで比較する際の5つの観点を整理します。
観点1:作業範囲(スコープ)の同一性
各社の見積もりが「同じスコープ」を前提にしているかを確認します。
たとえばA社の見積もりに決済機能の組み込みが含まれ、B社は別途見積もりにしている場合、総額の単純比較は意味を持ちません。
RFPベースで依頼している場合は、各社にRFP項目への「対応/オプション/対象外」を明示してもらうのが鉄板です。
観点2:内訳の粒度と前提条件の明示
「企画・設計:300万円」のように1行で済まされた見積もりは、内訳を細分化してもらいましょう。
作業項目・想定工数・人月単価・前提条件まで明示された見積もりほど、後から追加費用が発生しにくい傾向があります。
|
確認したい粒度 |
チェックポイント |
|---|---|
|
作業項目 |
各費目に含まれる具体的なタスクが列挙されているか |
|
想定工数 |
人日・人月での見積もり根拠が示されているか |
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単価 |
人月単価、もしくは作業単価が記載されているか |
|
前提条件 |
要件凍結のタイミング、レビュー回数、対応範囲の上限 |
観点3:体制と担当者の経験
提案体制図と各担当者の経験・実績を確認します。
同じ金額でも、担当者がEC構築の経験豊富なエンジニアか、新人中心のチームかで成果は別物になります。
チェックしたいのは、PMのEC構築の経験年数・実績、アサインされるエンジニアの人数と経験、既存のEC構築事例(業種・規模・構築期間)、プロジェクト体制図の4点です。
観点4:保守・運用フェーズの費用
初期費用が安くても、運用フェーズで月額費用や改修費用が膨らむケースは少なくありません。比較時には、3年・5年といった中長期の総コスト(TCO:Total Cost of Ownership)を試算しましょう。
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期間 |
試算項目 |
|---|---|
|
1年目 |
初期費用+月額×12+想定改修費 |
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3年累計 |
初期費用+月額×36+想定改修費+大規模改修1回 |
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5年累計 |
初期費用+月額×60+想定改修費+大規模改修2回 |
観点5:契約形態(請負/準委任)とリスク分担
ECサイトの契約形態は、大きく「請負契約」と「準委任契約」の2種類に分かれます。請負契約は成果物の完成に対して報酬を支払う形式で、要件が明確な場合にベンダー側が完成責任を負います。
準委任契約は業務の遂行に対して報酬を支払う形式で、要件が流動的なフェーズに向き、発注者側にも責任が発生します。
要件定義フェーズは準委任、開発フェーズは請負、運用フェーズは準委任、というように工程によって契約形態を使い分けるのが一般的です。
見積もり書に契約形態の前提が明示されているかも、忘れずに確認しておきます。
ECサイトの見積もりが膨らむ/抑えられる要因
見積もり金額は、要件の整理度合いやベンダーとのコミュニケーション次第で大きく上下します。代表的な要因を整理します。
見積もりが膨らむ要因
要件の後追い追加
要件が後から積み上がるほど、設計変更・再見積もり・再開発が発生して費用が膨らみます。要件凍結のタイミングを明示し、それ以降の追加要件は別途見積もりとする運用ルールを取り決めておきましょう。
機能過剰(参考サイトを取り入れすぎる)
「あのサイトの機能も欲しい」と参考サイトから要望を詰め込むと、見積もりは一気に膨らみます。優先順位(A/B/C/D)に従って、リリース時に必要な機能を絞り込むことが、予算管理の起点になります。
短納期
希望リリース日が極端に短いと、特急料金や追加人員のアサインで割増料金が発生します。事業上の制約がない限り、無理のないスケジュール設定にしましょう。
デザイン要件の曖昧さ
参考サイトの提示やブランドガイドラインの未整備でデザインの方向性が定まらないと、レビュー回数が増えて費用が膨らみます。
特殊な決済・物流連携
決済代行会社、配送業者、基幹システムなどの連携先が多い、または独自の連携要件がある場合、システム設計費が膨らみます。連携先と連携要件を事前に洗い出しておくのが先決です。
見積もりを抑えるアプローチ
標準機能の活用
ASP・SaaS型やパッケージ型のプラットフォームは、業界の標準機能を網羅しています。標準機能で満たせる範囲はカスタマイズを避けることで、費用を抑えられます。
フェーズ分割
初期リリースに必要な機能と、後追いで追加できる機能を切り分けて段階的に構築します。初期投資を抑えながら、運用しつつ改善できる利点があります。
ASP・SaaS型の活用
ASP・SaaS型のプラットフォームは、初期費用と運用負荷を抑えやすく、立ち上げスピードも速いため、規模が一定範囲に収まる事業ではコストパフォーマンスが高くなります。事業の成長に合わせてグレードアップできるプラットフォーム(Shopifyなど、Basicからエンタープライズまで同一プラットフォームで対応するもの)を選ぶと、将来のリプレイスコストも抑えやすくなります。
内製化できる範囲の切り分け
商品登録、ページ制作、撮影、コンテンツ制作など、社内リソースで運用可能な範囲を切り分け、外注範囲を絞ることで、運用フェーズの費用を抑えられます。
見積もり後の発注で陥りがちな失敗パターン
見積もり比較を経て発注先を決めたあとも、トラブルは起こり得ます。代表的な失敗パターンを5つ整理します。
失敗1:総額の安さだけで選び、運用フェーズでコストが膨らむ
初期費用が安いベンダーを選んだ結果、運用フェーズで月額費用が高い、追加改修の単価が高い、軽微な変更にも見積もりが必要、という事態に陥るケースです。比較時には3〜5年のTCOで試算するのが回避策になります。
失敗2:要件凍結のタイミングが曖昧で、追加見積もりが多発
要件定義フェーズで保留にした項目が、開発フェーズに入ってから次々と追加見積もりとなるケースです。要件定義の終了時点で何が確定し何が未確定なのかを文書化し、未確定項目の別途見積もりルールを取り決めておきましょう。
失敗3:保守契約が含まれず、リリース後の改修が止まる
「初期構築の見積もりに含まれていたが、保守契約は別途必要だった」とリリース直前に気づくケースです。見積もり段階で、初期構築終了後の保守体制と契約形態を明確に決めておく必要があります。
失敗4:システム連携の責任範囲が不明確
基幹システム、CRM、WMSなどとの連携で、不具合発生時にベンダー間で責任を押し付け合うケースです。連携先ベンダーとの責任分担を契約段階で明文化することが回避策になります。
失敗5:自社の役割(コンテンツ作成、商品データ整備)を見積もりに含めず工数破綻
「商品データ整備は自社でやります」と決めたものの、リリース直前に自社リソースが足りなくなり、急遽外注を追加して予算超過するケースです。自社の役割と必要工数を事前に試算しておくのが肝心です。
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規模・フェーズ別の現実的な予算組みフレーム
ECサイトの予算組みは、事業の規模・フェーズによって考え方が変わります。
ここでは月商規模ごとの予算フレームを整理します。
業種・取扱SKU数・連携要件によって幅は大きく動くので、目安としてご参照ください。
月商100万円未満(スモールスタート期)
|
項目 |
目安 |
|---|---|
|
推奨タイプ |
ASP・SaaS型(BASE、STORES、カラーミーショップ、Shopify Basic 等) |
|
初期費用 |
0〜30万円(テーマ購入、軽微なデザイン調整等) |
|
月額費用 |
0円〜数万円 |
|
構築期間 |
即日〜1ヶ月 |
|
重視ポイント |
スピード、初期投資の最小化、運用負荷の低さ |
このフェーズでは、ECサイト構築よりも商品開発・集客への投資が事業成長に直結することが多く、構築費用は最小限に抑えるのが定石です。
月商100〜500万円(成長期)
|
項目 |
目安 |
|---|---|
|
推奨タイプ |
ASP・SaaS型(カラーミーショップ、MakeShop、Shopify、Shopify Advanced 等) |
|
初期費用 |
30〜150万円(デザイン、機能拡張、アプリ追加等) |
|
月額費用 |
数万円〜10万円程度+決済手数料 |
|
構築期間 |
1〜2ヶ月 |
|
重視ポイント |
CVR改善、リピート施策、データ分析機能 |
CVR(コンバージョン率)の改善、リピート購入の促進、データ分析への投資価値が高まるフェーズです。
プラットフォーム選定では、決済手段の豊富さ、アプリエコシステム、UI改善のしやすさを重視します。
月商500〜3,000万円(拡大期)
|
項目 |
目安 |
|---|---|
|
推奨タイプ |
ASP・SaaS型(MakeShop、Shopify、Shopify Plus、futureshop 等) |
|
初期費用 |
100〜500万円(デザイン刷新、機能拡張、CRM連携等) |
|
月額費用 |
10万円〜数十万円+決済手数料 |
|
構築期間 |
2〜4ヶ月 |
|
重視ポイント |
在庫管理、CRM連携、マーケティング自動化、運用効率化 |
運用効率化と顧客データの活用が重要テーマになり、複数チャネルの在庫一元管理、CRM・MAツール連携、レポート機能の高度化が投資ポイントです。
月商3,000万円以上(中堅〜エンタープライズ)
|
項目 |
目安 |
|---|---|
|
推奨タイプ |
Shopify Plus、futureshop、ecbeing、ebisumart、SI Web Shopping、Salesforce Commerce Cloud 等 |
|
初期費用 |
500万円〜数千万円 |
|
月額費用 |
数十万円〜数百万円+決済手数料 |
|
構築期間 |
3〜12ヶ月 |
|
重視ポイント |
スケーラビリティ、基幹システム連携、グローバル展開、BtoB機能、専任サポート |
ピークアクセス時の安定稼働、基幹システムとの深い連携、グローバル展開、BtoB対応、専任サポートなどが、プラットフォーム選定の決め手になります。
リプレイス・リニューアル時の予算組み(既存EC事業者向け補足)
既存ECのリプレイスでは、新規構築費用に加えて、データ移行・運用切替・並行運用・社内教育の費用が発生します。
新規構築予算に20〜30%上乗せして試算するのが現実的です。
|
リニューアル規模 |
費用目安 |
|---|---|
|
小規模(デザイン刷新のみ) |
30〜100万円 |
|
中規模(機能追加、UI刷新) |
100〜300万円 |
|
大規模(システム刷新) |
300〜1,000万円 |
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超大規模(フルリプレイス) |
1,000万円〜 |
出典:Web幹事、Salesforceブログ、各社公式情報を基に整理(2024〜2025年時点)
まとめ
ECサイトの見積もりを精度高く取り、フェアに比較するには、依頼前の準備、RFPの整備、構築方法別の相場理解、見積もり書の費目の読み解き、比較観点の整理が欠かせません。
見積もりは単なる金額比較ではなく、自社の事業フェーズに合った構築方法と運用体制を選び抜くための判断材料です。
ECサイト見積もりで失敗しない7つのポイント
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目的・KPI・事業情報を整理してから依頼する:丸投げの見積もり依頼は割高になりやすい
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RFPを用意して横並び比較を可能にする:フェアな比較はRFPベースで初めて成立する
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機能要件には必ず優先順位を付ける:必須・重要・要望・将来の4段階で整理する
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構築方法別の相場感を理解する:ASP・SaaS/オープンソース/パッケージ/フルスクラッチで桁が変わる
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見積もり書は費目の粒度で見抜く:内訳が細かく前提条件が明示された見積もりほど信頼度が高い
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3〜5年のTCOで判断する:初期費用とランニング費用を分けて試算し、総額の安さだけで選ばない
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失敗パターンを先回りで潰す:要件凍結、保守契約、責任分担、自社の役割を事前に明文化する
最初の一歩を踏み出そう
ECサイトの見積もり取得は、事業目的を明確にして要件を整理した「準備段階」で勝負が決まります。完璧なRFPを最初から作る必要はありません。
まずは目的・事業情報・必須機能・予算・スケジュールを書き出すことから始め、準備が整ったら3〜5社に同じ条件で見積もり依頼を行い、本記事で紹介した観点で比較を進めてみてください。
【無料相談】ECサイト構築・リプレイスのご相談はShopifyへ ECサイト見積もりの取得や比較でお悩みの担当者様は、Shopifyの無料相談をご活用ください。事業フェーズ・要件・予算に応じて、現実的な構築プランと費用イメージをご提案します。見積もり比較の前段階から相談可能です。
参考文献
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経済産業省『令和5年度 電子商取引に関する市場調査』2024年 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/ie_outlook.html
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総務省『通信利用動向調査』
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Salesforceブログ『ECサイトの構築費用はいくら?相場の比較や見積もりポイントを解説』
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Web幹事『ECサイトの見積項目は、それぞれどんな費用?見積書の比較ポイントも解説!』
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Web幹事『ECサイト構築の料金相場は?費用を抑えるポイントもあわせて紹介』
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EC-ORANGE『RFP(提案依頼書)とは?EC構築のRFP作成法』
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各ECプラットフォーム公式サイト(BASE、STORES、カラーミーショップ、MakeShop、Shopify、futureshop、EC-CUBE、WooCommerce、Magento、ecbeing、ebisumart、SI Web Shopping、Salesforce Commerce Cloud)




