2023年に米国で放送された人気リアリティ番組『ゴールデン・バチェラー』シーズン1で、視聴者がすぐに気づいたことがあります。それは、主役のジェリー・ターナーの心をつかむには、彼が夢中になっているピックルボールを一緒に楽しめることが大切だ、ということです。米国で急速に人気が広がっているスポーツということもあり、22人の参加者の多くがすでにパドルを手にしていたのも不思議ではありません。
1965年に米国ワシントン州のベインブリッジ島で生まれたピックルボールは、近年、爆発的な人気を集めています。2020年には、420万人の米国人が少なくとも1回はピックルボールをプレイしたと報告されています。2023年には、その数が1,360万人に増加しました。この成長は、まだ衰える気配がありません。ピックルボールの会員数は2023年から2024年にかけて15%増加し、世界のピックルボール市場は2033年までに約44億ドル(約6,820億円)に達する可能性があります。
こうした数字からも、ピックルボールは今、起業家にとって大きなチャンスがある分野だといえます。ここからは、Varsity Pickle(英語)の共同創業者であるカレン・アレクサンダーとアデル・ハザンのアドバイスをもとに、このトレンドをビジネスに活かす方法を見ていきましょう。
ピックルボールで収益を上げる5つの方法
ピックルボールはスポーツであると同時に、人との交流を楽しめるアクティビティでもあります。そのため、アイデア次第で、愛好家と関わるさまざまなビジネスチャンスがあります。ピックルボールビジネスでは、プレイヤーのスキルアップをサポートしたり、新しい楽しみ方を提案したり、競技への愛着を表現できる商品やサービスを提供したりできます。ここでは、ピックルボールを通じて収益を上げる方法をいくつかご紹介します。
1. コーチング
すでにピックルボールの経験が豊富な方なら、ほかのプレイヤー向けにコーチングを行う方法があります。初心者はピックルボールクラブでレッスンを受けてスキルを磨くこともできますが、個別指導を求める人もいます。パーソナルコーチは、地域のコートやクラブなどで指導できます。料金は、時間単位またはレッスン形式ごとに設定するのが一般的です。たとえば、マンツーマンレッスンやグループクリニックなどがあります。
認定資格は必須ではありませんが、取得しておくと信頼性を高めることにつながります。Professional Pickleball Registry(PPR)やPickleball Coaching International(PCI)(いずれも英語)などが提供するプログラムをはじめ、複数の認定プログラムから選べます。認定を取得したら、サービス内容、料金、連絡先情報を詳しく掲載したウェブサイトを作成しましょう。
2. コートレンタル
ピックルボール施設では、さまざまなレベルのプレイヤーにコートを貸し出すことができます。利用者は通常、コートの予約時間に応じて料金を支払います。ピックルボールクラブの運営者はコートやネットの維持管理を行い、プレイヤーは自分の用具を持参するのが一般的です。
実店舗型のビジネスとして始める場合は、民間のレクリエーション施設として利用できるスペースを探しましょう。ピックルボールコートの標準的なサイズは、約6メートル × 長さ約13.5メートルです。周囲の余裕を含めると、プレイスペース全体は幅約9メートル × 長さ約18.5メートルほどになります。 複数のコートを設置する場合は、グループごとに分かれてプレイできるスペースに加え、受付やロッカーなどのスペースも必要です。
自分でコートレンタルビジネスを立ち上げる資金が足りない場合は、投資家や金融機関に共有できる、しっかりとしたビジネスプランを作成しましょう。
3. 用具の販売・レンタル
ピックルボール施設にプロショップを併設し、用具の販売やレンタルを行えば、追加の収益源を作ることができます。レンタルを提供することで、初心者が気軽にピックルボールを試せるようになります。一方で、本格的にプレイする人は、パドルやボール以外の用具を購入する可能性もあります。たとえば、ネット、シューズ、用具を持ち運ぶための専用バッグなどのアクセサリーです。
レンタルビジネスを始める場合は、実店舗を構えるのか、それとも移動式で運営し、顧客に用具を届ける形にするのかを決めましょう。オンラインで用具を販売したい場合は、既存のブランドと提携し、初期在庫コストを抑えながら高品質な商品を扱う方法も検討できます。この方法なら、市場の需要を試しながら、予算をマーケティングや顧客獲得に集中させやすくなります。
4. グッズ販売
スポーツウェアは、ピックルボールファッションの一部にすぎません。ピックルボールファンの中には、コートの外でもピックルボール好きを表現したいと考える人もいます。
幼なじみのカレン・アレクサンダーとアデル・ハザンが立ち上げたVarsity Pickle(英語)のように、ピックルボール愛好家向けの日常着をデザインするのもひとつの方法です。2人は以前から一緒に仕事をすることを夢見ており、2020年にピックルボールを始めたあと、この市場にチャンスがあることに気づきました。
アデルは次のように語ります。「ピックルボールのアパレルブランドは存在しませんでした。私たちは、ピックルボールをプレイする人へのギフトになるようなブランドを作りたかったんです。誰かに新しいパドルを買ってあげることはあまりないかもしれませんが、帽子やシャツ、スウェットシャツなら贈りやすいですよね」
2人はそれぞれの専門性を活かしました。カレンはデザイン、アデルはマーケティングを担当し、2021年にVarsity Pickleを形にしました。
「2人なら、ピックルボールの楽しさと誰でも参加しやすい雰囲気を表現する、クールなブランドを作れると感じました」とアデルは振り返ります。
独自のピックルボールグッズビジネスを始めるなら、以下のポイントを参考にしてみましょう。
- 小さく始める:「私たちはこれを副業として始めました。Shopifyなしでは始められなかったと思います。まず小規模にアイデアを試し、反応があるかどうかを確認することができました」とアデルは語ります。
- ソーシャルメディアを活用する:小規模なチームだったVarsity Pickleは、ソーシャルメディアとインフルエンサーマーケティングを活用して認知度を高めました。人気ポッドキャストで取り上げられたあと、大きな反響を得たといいます。「それが軌道に乗ったとき、『よし、もっと大きくしていこう』と思いました」とアデルは語ります。
- 慎重に拡大する:初期の成功を受けて、アデルとカレンはカスタムアイテムやスポーツ用ギアへと商品ラインを広げました。一般向けのグッズに加え、地元のクラブやレクリエーションリーグ向けのギアもデザインしています。
- 常にネットワークを広げる:実際にピックルボールをプレイし、コミュニティとのつながりを築くことが、Varsity Pickleの成長を支えました。ピックルボール関連のビジネスを始めたい人に向けて、カレンはこうアドバイスしています。「まずは外に出て、試してみることです。ピックルボールをプレイする人たちは、その魅力について話したがりますし、本当にこのスポーツが好きで夢中になっています。だから、国内のどこにいても、ピックルボールコミュニティはきっと見つかるはずです」
5. トーナメント・リーグの主催
ピックルボールクラブを立ち上げてトーナメントを主催したり、リーグを運営して参加費を徴収したりする方法もあります。施設側はコートの利用時間に応じて料金を設定したり、リーグ参加者向けに会員制モデルを用意したりできます。イベント中に飲食サービスを提供したり、用具を販売したりすれば、追加収益につなげることも可能です。トーナメントには、新しいプレイヤーにクラブを知ってもらい、後日コートを予約して再訪してもらえるというメリットもあります。
トーナメントやリーグを始める場合は、アカウントログイン、ニュースレター登録、決済処理などに対応できるウェブサイトが必要になります。基本的なShopifyのマーチャントアカウントでこれらの機能をサポートでき、Shopify App Storeでは、オンラインコミュニティをさらにカスタマイズするためのプラグインも多数提供されています。
ピックルボールビジネスの始め方
独自のピックルボールビジネスを始めるには、以下のステップを参考にしてみましょう。
1. 課題を特定する
ターゲットとなる顧客が抱えている悩みや課題を見つけ、それを解決する方法を考えましょう。たとえば、カレンとアデルは、ピックルボール愛好家向けの楽しいグッズが不足していることに着目し、Varsity Pickleの商品ラインを開発しました。
2人は、ピックルボールファンの多くがすでに用具を持っている可能性が高いことに気づきました。そこで、身近なピックルボール好きの人に贈れるアパレルやアクセサリーのラインを作りました。
課題を特定するには、次のような問いを自分に投げかけてみましょう。
- どのような商品機会があるか、または自分ならどのような商品を購入したいか?
- 自分の地域で不足しているサービスは何か?
- すでに解決策はあるものの、価格が適切ではないものはないか?
- この問題をより簡単に解決する方法はないか?
- 現在の商品やサービスから取り残されている人は誰か?
これらの質問を手がかりに、自分が埋められる市場のギャップを見つけていきましょう。
2. ターゲットオーディエンスを見つける
地域にあるピックルボール関連のビジネスを調べると、ターゲットオーディエンスを決めるヒントになります。たとえば、近隣の施設が経験豊富なプレイヤー向けに運営されている場合は、初心者向けのピックルボールクリニックを始めたり、初めての人でも気軽に試せるカジュアルな場を提供したりすることを検討してみましょう。
ターゲット市場を考える際は、以下のような点も確認します。
- 顧客層:ターゲット市場の平均年齢、性別、収入、婚姻状況、教育レベルなどを確認します。
- 規模:商品やサービスを通じて、どのくらいの人数に提供できると見込めるかを考えます。
- 行動:ターゲットオーディエンスはどこで時間を過ごしているのか、ソーシャルメディアをどのように使っているのか、対面イベントに参加するのかを確認します。
これらの情報を組み合わせることで、マーケティング戦略やブランドボイスを考えやすくなります。
3. 自分の強みを考える
自分の専門性や強みを見直し、活用できる資産を整理しましょう。そうすることで、見込み顧客に提供できる価値あるサービスを見つけやすくなります。たとえば、テニスクラブを運営している場合は、ピックルボールコートを追加してサービスを広げることができます。グラフィックデザインの経験がある場合は、ピックルボール向けのアパレルをデザインできるかもしれません。
自分の強みを考えるだけでなく、SWOT分析を行い、強み、弱み、機会、脅威を整理してみましょう。これにより、成長が期待できる分野や、今後直面する可能性のある課題を全体的に把握できます。
4. ビジネスプランを作成する
ピックルボールビジネスを立ち上げ、成長させていくうえでの意思決定の指針として、詳細なビジネスプランを作成しましょう。ビジネスプランには、以下の内容を含める必要があります。
- ミッションステートメント:ビジネスの目的や大きな目標をまとめたものです。
- 主要パートナー:自分の経歴や、関係者の経験に関する情報を含めます。
- 価格体系:商品やサービスに対してどのように料金を設定するのか、またその価格戦略によってどの程度の利益率が見込めるのかを整理します。
- 市場調査:競合分析から得た学びを含め、ビジネスの方向性を考えるうえで参考にした市場調査の知見をまとめます。
- 起業コスト:ビジネスを立ち上げるために、どのくらいの費用がかかるのかを見積もります。
明確なロードマップがあれば、根拠のある意思決定がしやすくなり、関心を持つ投資家に対しても事業の内容をわかりやすく説明できます。
5. ビジネスをマーケティングする
新しいビジネスを知ってもらうために、マーケティングプランを立てましょう。一般的なプロモーション方法には、SNSマーケティングやメールマーケティングがあります。地域のピックルボール団体と提携したり、新規顧客を呼び込み、コミュニティとのつながりを築くために割引を提供したりすることも検討できます。
ビジネスを成長させる際は、以下のような主なマーケティング指標を意識しましょう。
- マーケティング投資収益率(ROI)
- 顧客獲得コスト(CAC)
- クリック単価
- ソーシャルメディアのエンゲージメント、リーチ、売上
- メール購読者数
- ウェブサイトへの直接流入
Google AnalyticsやShopify Analyticsなどの分析ツールを使って、どの施策が成果につながっているのか、どの施策を見直せるのかを確認しましょう。
ピックルボールビジネスの始め方に関するよくある質問
ピックルボール施設を所有して収益を上げることはできますか?
適切に運営すれば、ピックルボール施設はオーナーにとって収益性の高いビジネスになる可能性があります。レッスンや用具レンタルなど、提供するサービスを広げることで、プレイヤーを呼び込み、収益を増やすこともできます。
独自のピックルボールビジネスを開業するにはどうすればよいですか?
ピックルボールビジネスを始めるには、まず事業の方向性を明確にしましょう。どのようなサービスを提供したいのかを決め、ターゲットオーディエンスにどのような価値を提供できるのかを考えます。市場調査を行って競合を把握し、ビジネスプランをまとめましょう。成功につながるピックルボールのビジネスプランでは、ビジネスをどのようにマーケティングし、収益化していくのかを示す必要があります。
ピックルボール業界の市場規模はどれくらいですか?
ピックルボール業界は急速に成長しています。近年の調査では、ピックルボール用具業界だけで650億ドル(約10兆750億円)以上の価値があるとされています。財務予測では、今後も業界の成長が続くと見込まれています。



