近年、潜在顧客は有料広告、SNS、口コミなど、複数のチャネルを行き来しながら、ブランドを知り、比較し、購入に至ることが増え、購買行動はより複雑になっています。そのため、自社の商品や顧客に合ったマーケティングチャネルを選ぶことは、集客だけでなく、売上の伸び方や顧客との関係づくりにも大きく関わります。
この記事では、マーケティングチャネルの意味や主な種類、選び方のポイント、ECでも活用できる代表的なチャネルを紹介します。
マーケティングチャネルとは?
マーケティングチャネルとは、ブランドや商品の情報を顧客に届け、興味や関心を高め、購入や継続利用につなげるための経路です。たとえば、潜在顧客がInstagram(インスタグラム)で商品を知り、検索エンジンで詳しく調べてECサイトを訪れ、メールの案内をきっかけに購入を検討し、リターゲティングメールで購入に至ることがあります。このように、顧客が購入に至るまでの各接点が、それぞれマーケティングチャネルとして機能します。

マーケティングチャネルの種類と分類方法
オンライン・オフラインのチャネル
インターネット上で顧客と接点をつくるオンラインチャネルは、認知獲得から比較検討、購入までの顧客との接点を段階ごとに設計しやすい点が強みです。
一方、オンライン以外の場所で顧客と接点をつくるオフラインチャネルは、商品を直接見てもらえたり、試してもらえる点が強みです。それぞれ次のようなものがあります。
オンラインチャネル
- SNS(Instagram、Facebook、X、TikTok、LINEなど)
- 検索エンジン(オーガニック検索、検索連動型広告)
- アプリ
- メルマガ・ニュースレター
- Web広告
- オウンドメディア
- LINE公式アカウント
- プレスリリース
オフラインチャネル
- ポップアップストア
- イベントやマルシェ
- 展示会
- 店頭でのサンプル配布
- DM
- チラシ
- 交通広告、雑誌広告
商材によってはオンラインだけでなく、オフラインの接点が重要になることもあります。たとえば、香りや質感を確かめたいコスメ、試着が重要なアパレル、試食や体験が購入につながりやすい食品や雑貨では、リアルな接点が購入の決め手になることがあります。
無料・有料のチャネル
マーケティングチャネルは、無料と有料という切り口でも整理できます。
無料のチャネルとは、お金を支払わずにコンテンツをターゲットオーディエンスに公開できる場所のことです。SNS投稿、オーガニック検索、メールなどが代表例で、成果が出るまでに時間がかかりますが、継続的に運用し育てることで、自社の資産になりやすいのが特徴です。
一方、有料のチャネルは、お金を払って潜在顧客に向けた広告を表示する場所です。検索連動型広告やSNS広告などがあり、短期間で露出を増やしたいときに向いています。
無料と有料のチャネルは、それぞれ役割が異なります。検索やメール、SNSで継続的に無料の接点を育てながら、新商品の発売などのタイミングでは有料広告で認知を広げるといった組み合わせが効果的です。
チャネルの役割による分類
マーケティングチャネルは、次のように、役割ごとに分類して考えることもできます。
- 流通チャネル:商品を顧客に届けるための経路です。
- 販売チャネル:実際に商品を購入できる場所です。
- コミュニケーションチャネル:商品を知ってもらい、興味を持ってもらい、購入や再購入を後押しする接点です。
どの役割を強化したいかによって、重視すべきチャネルは変わります。たとえば、認知を広げたいならコミュニケーションチャネル、購入しやすさを高めたいなら販売チャネルの見直しが重要です。
流通の段階による分類
マーケティングチャネルは、流通の段階によっても分類できます。
- 直接チャネル:DtoCのECサイトや直営店など、生産者が消費者へ直接商品を届けるチャネルです。価格やブランド体験を自社で管理しやすいのが特徴です。
- 1段階チャネル:生産者と消費者の間に小売業者が入るチャネルです。小売店が販売を担うことで、多くの顧客に商品を届けやすくなります。
- 2段階チャネル: 生産者と小売業者の間に卸売業者が入るチャネルです。卸売が流通や在庫の調整を担うことで、広い地域に商品を効率よく流通できます。
ブランド体験を重視する場合は直接販売チャネルを活用し、幅広い消費者向けには1段階・2段階チャネルを利用するなど、複数のチャネルを使い分けることで、地域や顧客層に応じた販売が可能になります。
効果的なマーケティングチャネル15選
- SNS
- メール
- オウンドメディア
- オーガニック検索
- 検索連動型広告
- アプリ
- Web広告
- 口コミ・紹介施策
- アフィリエイト
- SMS配信
- ポップアップストア
- プレスリリース・外部メディア掲載
- 提携・コラボレーション
- インフルエンサー
- ダイレクトメール
1. SNS
SNSは、Instagram、Facebook(フェイスブック)、X(エックス)、TikTok(ティックトック)、LINEなどを通じて顧客と日常的にコミュニケーションできる接点をつくるチャネルです。認知拡大やブランド理解、ファンづくりに向いており、最初に取り組みやすいチャネルのひとつです。
商品の魅力を視覚的に伝えやすく、投稿、動画、ライブ配信、ストーリーズなど、表現方法が多いのも特徴です。まずは、ターゲット層がよく使うSNSを1つ選び、投稿内容の軸を決めて続けると運用しやすくなります。
たとえばLOWYAは、SNSをマーケティングチャネルとして認知と共感を広げています。Instagramでは150万人フォロワーを獲得し、ファン層を広げ、さらに公式サイトでも動画を活用して商品理解を深め購買につなげています。
2. メール
メールは、見込み客や既存顧客に継続して情報を届けるチャネルです。新商品のお知らせ、セール情報、再入荷通知、購入後のフォロー、カゴ落ち対策などに活用できます。
一度興味を持った人との関係を深めるのに向いており、メール登録の導線を整え、登録特典や限定情報を用意すると始めやすくなります。
たとえばスマートウォッチのamazfitの日本公式ストアは、ECサイトの成長フェーズでメルマガ運用を本格化しました。月2〜4回のクーポンやキャンペーン配信により、メルマガ経由の販売本数は約6倍に増加しました。また、メルマガ会員限定の特典を用意するなど、メルマガ登録促進の施策も同時に行っています。
3. オウンドメディア
オウンドメディアとは、企業が自社で運営・管理する情報発信チャネルのことです。自社ブログや、動画などで、使い方、選び方、比較ポイント、背景ストーリーなどを発信することで、購入前の疑問に答えやすくなります。
特に、説明が必要な商品や、ブランド理解が購入に影響する商品では有効です。記事はSNSやメールにも展開しやすく、他のチャネルの土台にもなります。
たとえば、長野県の老舗味噌蔵である新田醸造は味噌を使ったレシピを継続的に発信しています。味噌汁や料理のアイデアを探している人が検索から記事にたどり着き、その流れで商品ページも見られるようになっているため、読みものが集客と購入の両方につながる設計になっています。
4. オーガニック検索
オーガニック検索は、Googleなどの検索エンジン結果から見込み客の流入を促すチャネルです。広告費をかけずに検索結果の上位表示を目指す施策をSEO対策といいます。
SEOでは、サイト構成や内部リンク、表示速度の最適化に加え、ユーザーの課題解決につながる価値あるコンテンツの提供が重要です。
そのため、顧客が実際に調べそうな言葉を起点にページや記事を作ることが大切です。
5. 検索連動型広告
検索連動型広告は、検索結果の上部などに広告を表示し、商品を探している人をサイトへ誘導するチャネルです。オーガニック検索よりも早く上位に表示しやすいため、購入意欲の高い検索ニーズにすぐ対応したいときに向いています。狙う検索語句を絞り込み、広告文と遷移先LPの内容をそろえることでより成果につながりやすくなります。
6. アプリ
アプリは、スマートフォン上で継続的な顧客接点をつくるチャネルです。商品の購入だけでなく、記事、動画、音声コンテンツの閲覧、ブックマーク、プッシュ通知による再訪問促進などを組み合わせやすく、ブランドの世界観や体験をひとつの場所にまとめやすいのが特徴です。
特に、リピート購入が多いブランドや、コンテンツ発信とECを一体で運営したいブランドと相性がよくなります。SNSやメルマガで認知や興味を高めたあと、アプリで継続的に接触する流れを作ることで、再訪問や購入の機会を増やせます。
たとえば「北欧、暮らしの道具店」は、2025年8月にアプリ全体で500万ダウンロードを突破し、EC売上の約8割がアプリ経由になったと発表しています。さらに、同社はSNSとアプリの相互作用によってアプリ起動率や購入率が高まり、サービス全体の成長を後押ししていると説明しています。
7. Web広告
Web広告は、SNS、Webメディア、動画配信サービス、アプリなどに出稿でき、検索連動型広告より広く認知を獲得したいときに適したチャネルです。
新商品の発売、セール、季節商戦、キャンペーン告知などと相性がよく、配信後の反応を見ながら訴求やクリエイティブを調整しやすいのもメリットです。
たとえばフードロス削減を掲げるECモールKuradashiは、2023年6月期を事業成長の加速時期と位置づけ、広告投資を強化しました。日本ネット経済新聞によると、同社は広告費として2億6300万円を投じ、新規顧客の獲得にもつながったといいます。
8. 口コミ・紹介施策
口コミや紹介施策は、既存顧客の声や紹介を通じて新しい顧客と出会うチャネルです。レビュー、紹介コード、友達紹介キャンペーンなどが代表例です。カスタマーボイスは信頼されやすく、満足度の高い商品や、誰かに勧めたくなる商品では特に効果が発揮されます。レビューを書いてもらいやすい導線や紹介特典を整えるところから始めましょう。
たとえば完全栄養の主食を提供するBASE FOOD(ベースフード)は、友だち紹介キャンペーンを実施しています。専用URLから初回継続コースを購入した人には2,000円オフ、紹介した人には3,000ポイントと10,000マイルが付与される仕組みで、LINEやX、QRコードなどを通じてシェアされやすい設計になっています。
9. アフィリエイト
アフィリエイトは、外部のメディアやインフルエンサー、比較サイトなどに商品を紹介してもらい、成果に応じて報酬を支払うチャネルです。
自社だけでは届きにくい層にアプローチしやすく、信頼されている発信者を通じて商品を知ってもらえるのが特徴です。レビュー記事や比較記事との相性がよく、購入前に情報を集めている人に届きやすい傾向があります。
10. SMS配信
SMS配信は、スマートフォンに直接情報を届けるチャネルです。短いメッセージで、限定商品の発売、短期キャンペーン、再入荷通知、会員向けの特別案内など、今すぐ伝える価値のある情報を届けたいときに向いています。
11. ポップアップストア
ポップアップストアは、商品を実際に見たり試したりできる場を通じて顧客と出会うチャネルです。オンラインだけでは伝えにくい魅力を直接届けられ、顧客の反応をその場で見られるため、どんな言葉が伝わるか、どの見せ方がよいかを確認できるのもメリットです。出店するなら、SNSフォローやメール登録、自社ECへの誘導まで設計しておくと、その後の接点につなげやすくなります。
たとえば日本茶の専門店である一保堂茶舗は、期間限定のポップアップストアを展開し、特設ページやInstagramと連動しながら限定メニューやイベント情報を発信しています。
12. プレスリリース・外部メディア掲載
プレスリリースを出し、外部メディアに掲載してもらうことで、ブランドや商品に関する情報を発信し認知を広げることができます。新商品や新サービスの発売、イベント開催、調査結果、ブランドの取り組みなど、話題性のある情報があるときに効果的です。
まずプレスリリースを作成して情報を発信し、それを雑誌、Webメディア、業界メディア、ニュースサイトなどの編集部に持ち込み、取材や掲載につなげていきます。たとえば、話題性のある新商品や限定企画がある場合は、事前に自社サイトに商品ページや特集ページを用意しておくと、掲載後の検索やサイト訪問を受け止めやすくなります。
13. 提携・コラボレーション
提携・コラボレーションは、他社ブランドやクリエイター、コミュニティと協力して、新しい顧客層と出会うチャネルです。商品コラボ、共同企画、相互紹介などが代表例です。
自社だけでは届きにくい層に、相手の信頼や文脈の中で自然に出会ってもらえるのが強みです。相手の知名度だけでなく、ブランドアイデンティティの親和性や、顧客との相性を見ることが重要です。
たとえば土屋鞄製造所は、サントリー「マスターズドリーム」と提携し、ノベルティと、そのパッケージデザインを監修しました。両者は、時間をかけたものづくりや、その背景にある想いを伝えることを大切にしており、対談を通じてそれぞれの哲学を発信しています。
14. インフルエンサー
インフルエンサー施策は、外部の影響力のある発信者を通じて商品やブランドを知ってもらう手法です。自社だけでは届きにくい層にアプローチしやすく、第三者の視点を通して魅力を伝えられるのが特徴です。レビュー記事、体験投稿、PR投稿、アンバサダー施策など、商品の見せ方に合わせて展開しやすいのも強みです。
たとえば中国発の化粧品ブランドPerfect Diary(パーフェクトダイアリー)は、日本市場での認知拡大に向けて美容系インフルエンサーを招いた先行体験イベントを実施しました。InstagramでもPRを依頼しており、日本のインフルエンサーを通して、日本の消費者へのアプローチを探っています。
15. ダイレクトメール
ダイレクトメールは、ハガキ、カード、カタログ、サンプルなどを郵送で届けるチャネルです。オンライン施策が中心でも、既存顧客への再接点として使いやすく、新商品案内、クーポン、季節商品の特集、会員向けカタログなどと相性がよいです。購入履歴や興味関心に応じて内容を変えると、より活用しやすくなります。

マーケティングチャネル成功のポイント
顧客の行動に合わせて選ぶ
最初に考えたいのは、見込み顧客がどの接点で商品を知り、どの場面で比較し、何をきっかけに購入を決めるかです。検索して比較してから購入するのか、購入後にメールやLINE(ライン)の案内を見て再購入するのかなど顧客の動きを起点に考えることで、どの接点を優先するべきかを整理しやすくなります。
たとえば、記事コンテンツやSNSで役立つ情報を発信し、顧客が自分で調べる中で見つけてもらうインバウンドマーケティングの手法を取り入れるのも良いでしょう。
役割を分けて設計する
複数チャネルを活用する場合は、それぞれの役割を分けることが大切です。SNSは認知、オーガニック検索やオウンドメディアは比較検討、メールは再購入促進、広告は短期的な集客というように、チャネルごとの得意分野を整理すると、施策が重なりにくくなります。
最初から広げすぎない
少人数で運営するECでは、最初から多くのチャネルを同時に回すのは簡単ではありません。まずは2〜3個に絞り、成果や運用負荷を見ながら広げていくほうが進めやすくなります。たとえば、SNSとメール、またはオウンドメディアと検索エンジンのように、セールスファネルにおける役割の異なる組み合わせから始めると導線を作りやすくなります。
効果測定を前提にする
マーケティングチャネルは、利用すること自体が目的ではなく、売上や利益につながっているかを確認しながら改善することが重要です。流入数、クリック率、購入率、リピート率、顧客獲得単価など、チャネルごとに見る指標を決めておくと判断しやすくなります。
自社に資産が残る設計にする
SNSや広告は集客力がありますが、アルゴリズムの変化や広告費の変動の影響を受けやすい面もあります。そのため、最終的には自社ECへの訪問やメール登録、会員登録など、自社で継続的に接点を持てる状態につなげることが大切です。
オムニチャネルで接点を統合する
オムニチャネルとは、オンラインとオフラインを横断して顧客体験をつなぐ考え方です。たとえば、ポップアップストアで商品を知ってもらい、その後SNSやECへ自然に誘導することで、チャネルをまたいだシームレスな購買体験をつくることができます。接点全体を一つの体験として設計することで、顧客満足度や顧客生涯価値の向上につながります。
まとめ
マーケティングチャネルとは、顧客に商品やブランドの情報を届けるための接点です。SNS、検索エンジン、メルマガ、広告、口コミ、イベント、プレスリリースなど、それぞれのマーケティングチャネルは役割や強みが異なります。大切なのは、流行している施策を一通り試すことではなく、自社のマーケティング戦略に合ったチャネルを選び、役割分担しながら育てていくことです。
認知を取るチャネル、比較検討を支えるチャネル、再購入につなげるチャネルを組み合わせて設計し、まずは優先度の高い2〜3個から改善を重ねていきましょう。
マーケティングチャネルについてのよくある質問
どのマーケティングチャネルから始めればいいですか?
認知を取るチャネルと、再訪問や再購入につなげるチャネルで、必要なほうを選ぶのがおすすめです。たとえば、認知獲得ならSNSか検索エンジン、購入後の関係づくりならメルマガやLINE公式アカウントが候補になります。少人数で運営している場合は、「Instagram+メルマガ」「SEO記事+メール配信」のように絞り、まず3か月ほど運用して反応を見ると判断しやすくなります。
無料チャネルと有料チャネルは、どちらを優先すべきですか?
短期間で集客したいなら有料チャネル、長期的な資産をつくりたいなら無料チャネルを重視するのが基本です。実務では、広告で認知や初回流入を取りつつ、SEOやメルマガ、SNSで継続的な接点を育てる組み合わせが現実的です。即効性と継続性のバランスを見ながら考えると、偏りにくくなります。
マーケティングチャネルの効果はどうやって判断すればいいですか?
チャネルごとに見る数字を1〜2個に絞ると判断しやすくなります。たとえば、SNSならプロフィールや商品ページへのクリック数、SEOなら自然検索からの流入数、メルマガなら開封率やクリック率、広告なら顧客獲得単価や購入率を見る方法があります。また、SNSは認知、SEOは比較検討、メルマガは再購入促進というように役割を決めたうえで、見ると改善しやすくなります。
文:Taeko Adachi





