ベンチャーキャピタリストであり億万長者でもあるピーター・ティールは、著書『Zero-to-One(ゼロ・トゥ・ワン)』の中でこう述べています。「優れた販売と流通は、製品の差別化がなくても独占を生み出すことができる。しかし、その逆は成り立たない」
世界的なサプライチェーン危機に関するニュースは、誰もが目にしているでしょう。水路の混雑、貿易戦争、経済制裁が業界を悩ませ続けており、多くの小売業者が物流システムの再構築を迫られています。
混乱が続く中でも、小売業者は製品を流通させる方法を見つけなければなりません。どれほど優れた製品であっても、販売できなければビジネスモデルとして成立しないからです。
幸いなことに、小売業者が強固な物流システムを構築する方法は存在します。物流に投資することで、効率的に製品を販売し、顧客を満足させ、収益に好影響を与えることができます。本記事では、その具体的な方法を解説していきます。
物流(物的流通)とは
物流(物的流通)とは、倉庫、工場、配送センター間での商品、製品、原材料の移動、そして完成品を顧客に届けるまでの一連の流れを指します。ECや卸売などの販売流通チャネルのほか、カスタマーサービス、在庫、資材、受注処理、輸送といった要素が含まれています。
物流が重要な理由
- 売上の増加
- 配送スピードの向上
- コスト削減
- 価格安定化のサポート
物流はサプライチェーンマネジメントにおいて重要な役割を果たします。物流システムへの投資には、売上増加、配送の高速化、コスト削減、価格安定化など、さまざまなメリットがあります。
流通は、いわば包括的な概念だ。本質的には、製品を消費者にどう届けるかを指している。
ピーター・ティール、ベンチャーキャピタリスト、『Zero-to-One(ゼロ・トゥ・ワン)』著者
売上の増加
製品をより速く、より経済的に配送できる物流システムを活用することで、企業は顧客満足度と売上を向上させることができます。
そのため、地域化は多くの企業にとって常に最優先事項です。約90%の企業が、今後3年間で地域のサプライヤーや流通業者と協力する計画を立てています。
便利な場所に製品を保管し、効率的に移動させる能力こそが、競争が激化するグローバル市場において小売業者が成功し続けるための鍵となります。
配送スピードの向上
物流への投資がもたらす最大のメリットは、配送時間の短縮です。オンライン買い物客のほぼ半数(48%)が通常2〜3日以内に荷物を受け取り、42%が4〜7日以内に受け取っている。消費者はすべての小売業者に、より速い配送を期待しています。
ロンドンを拠点とするプレミアムジュエリーブランドCRAFTD(英語サイト)のデジタル責任者、ダン・ポッター氏はこう語ります。「物流システムへの投資は、配送時間を短縮し顧客を満足させる最も確実な方法です。これは、国内の複数の拠点に戦略的に商品を保管することで実現します」
「そして配送スピードを上げることで、顧客がカートを放棄する可能性が低くなり、継続的に購入してくれる可能性が高まります。すべての企業に適しているわけではありませんが、物流システムへの投資は配送時間を改善し、ひいては顧客満足度を向上させることができるのです」
物流システムへの投資は、配送時間を短縮し顧客を満足させる最も確実な方法だ。
ダン・ポッター、CRAFTD デジタル責任者
コスト削減
物流の最適化がもたらすもう一つのメリットは、サプライチェーンコストの削減です。削減できる領域には以下が含まれます。
- 輸送:物流システムを活用することで、配送プロセスを高速化・改善できる。その結果、配送や保管に余分な費用を支払う必要がなくなる。
- 在庫:在庫と需要のバランスをより適切に取ることができ、過剰在庫の保管費用を節約できる。
- 倉庫:製品を効率的に移動させることで、余分な保管スペースの費用を支払う必要がなくなり、
- 倉庫コストが削減される。
正確な在庫カウントは、保管スペースの最適化に役立つ。倉庫や保管室で各アイテムが占めるスペースを正確に把握することで、利用可能なすべてのスペースを効率的に活用できる。
ルーキー・リー、Neutypechic共同創業者兼プロジェクトマネージャー
💡 プロのヒント: Shopify POSには、複数の店舗、オンラインストア、倉庫全体で在庫を管理・コントロールするためのツールが備わっています。需要予測、低在庫アラートの設定、発注書の作成、売れ筋商品や滞留商品の把握、在庫カウントなど、さまざまな機能を利用できます。
価格安定化のサポート
物流のもう一つの大きなメリットは、価格の安定化です。製品を効率的かつ迅速に配送できるシステムを導入することで、需要が高く供給が少ない時期の価格高騰を防ぐことができます。
物流システムが整っていれば、需要が高い時期でも製品を供給でき、価格を安定させることができます。また、予期せぬ取扱費用や配送費用をカバーするために価格を引き上げる必要もなくなります。
物流を構成する要素
- カスタマーサービス
- 受注処理
- 在庫管理
- 輸送
- 倉庫保管
- 梱包・資材ハンドリング
これらの要素を個別に見ていきましょう。
カスタマーサービス
カスタマーサービスは物流において重要な要素です。一貫して良質なサービスや親しみやすい対応といったポジティブな体験は、顧客ロイヤルティに影響を与えます。
成功している企業は、物流活動の指針となる高水準のカスタマーサービスを設定しています。例えば、企業は以下を保証する場合があります。
- 配送関連の問い合わせへの即時対応
- 2日以内の配送
- 多様な配送オプション
これらの保証が、企業が採用する配送・流通方法を決定します。例えば、2日配送を提供する企業は、注文を時間通りに履行するためにラストワンマイル配送ロジスティクスに投資する可能性があります。
受注処理
受注処理プロセスには、注文を受けてから配送するまでの流れが含まれます。注文フルフィルメントは、顧客を満足させるために正確性と信頼性に依存しています。約束された配送日から2日以内に購入品が届かない場合、買い物客の69%が、その小売業者で再び買い物をしない可能性が高いと回答しています。
ピッキング、仕分け、追跡、請求書発行、配送は、受注処理プロセスの一部です。管理ツールは、記録シートのような手書き文書から、オンライン注文による高度に自動化された記録まで、さまざまな形態があります。
在庫管理
在庫管理とは、過剰なコストを発生させることなく顧客需要に応えられるよう、在庫レベルを管理することです。
- 過剰在庫は、保管コストの増加と資金の固定化につながる。
- 在庫不足は、顧客の失望と販売機会の損失につながる。
効果的な在庫管理システムは、さまざまな要因のバランスを取りながら在庫レベルを最適化し、コストを最小限に抑えます。また、顧客の注文を確実に履行できるようにします。
リードタイムが長い企業は、在庫切れを避けるために高めの安全在庫を保持する傾向があり、一方でリードタイムが短い企業は、より低い在庫レベルで対応可能な場合があります。
安全在庫の計算は、過去のデータ、統計的手法、需要予測を使用して行うことができます。望ましい安全在庫レベルが決定されたら、企業は在庫レベルを追跡し、望ましいレベルを維持するためのシステムを確立する必要があります。
在庫レベルが低下した際には、製品を社内で製造するか、サプライヤーから注文するかにかかわらず、企業は在庫を補充しなければなりません。いずれの場合も、サプライチェーンの混乱を避けるために事前の計画が重要となります。
関連記事:在庫管理とは?考え方や目的、おすすめのアプリ・システムを紹介
💡 プロのヒント:オンラインストアと実店舗の運営に異なるプラットフォームを使用すると、在庫の不一致が発生しやすくなります。これにより、差異を調整し在庫レベルの正確性を確保するために、より頻繁な実地棚卸が必要になる可能性があります。
輸送
輸送は物流において最も重要な機能です。生産地から倉庫、そして最終ユーザーへと製品を移動させることを含みます。輸送により、製品が適切な時間に正しい目的地に配送されます。
一般的な輸送手段には、いくつかの種類があります。
- 道路輸送:トラックや車両による製品の移動。サプライチェーンにおいて商品を移動させる最も効率的な方法だ。米国の輸送業界は、2019年に1日平均約5,520万トン、540億ドル(約8.48 兆円)以上相当の貨物を輸送した。
- 鉄道輸送:列車による商品の移動。長距離輸送では鉄道の方が安価で、純トンあたり約70.27ドル(約1万円)に対し、トラック輸送は純トンあたり約214.96ドル(約3.39 万円)。
- 航空貨物:飛行機による商品の移動。世界中に貨物を迅速かつ安全に輸送するのに最適。ただし、他の輸送手段よりも高額になる傾向にある。
- 海上輸送:船舶による製品の移動。低コストで大量の製品を輸送するのに最適で、米国内および世界中で広範囲をカバーしている。船舶は世界貿易量の80%以上を輸送している。
- パイプライン:パイプシステムによる製品の移動。ガスなどの液体を大量に消費地域に輸送するのに最適だ。
ロジスティクスは、成功する輸送システムの鍵です。ロジスティクスシステムは、製品が正しいスケジュール、配送ルート、輸送手段に従うことを確実にします。効果的なロジスティクスシステムは、速度、利用可能性、信頼性、コストに基づいて適切な輸送方法を選択するのにも役立ちます。
倉庫保管
物流システムには通常、商品を保管するための1つ以上の倉庫があります。小売業者は倉庫保管に2つのアプローチを取ります。
- 従来型の倉庫保管:在庫を保管する中央拠点に対して料金を支払う。すべての在庫が倉庫に送られ、そこで処理、保管され、店舗(またはオンライン販売の場合は顧客の玄関)に配送される。
- サードパーティロジスティクス(3PL):既存の倉庫には、在庫を保管するためにレンタルできるスペースがあることが多い。保管料と配送料を支払うが、在庫の保管と移動は実際にはサードパーティロジスティクス企業が行う。配送は迅速で手頃な価格であることが多い。
3PLは、流通とフルフィルメントの信頼できるパートナーとなっています。サプライチェーン管理会社Armstrong & Associatesの最近のレポートによると、Fortune 500企業の90%が3PLプロバイダーと協力しています。
3PLと協力するメリットには以下が含まれます。
- 在庫管理と流通チャネルについて心配する必要がない
- 在庫追跡ツールにアクセスできる
- 配送を改善し、より速く出荷できる
従来型のルートを選択する場合は、在庫を直接管理し、倉庫にスタッフを配置する必要がある。以下のような要因を考慮する必要があります。
- 市場の規模
- 顧客注文の頻度
- 輸送システム
- 利用可能な保管・取扱設備
- 最適な倉庫レイアウト
成長して複数の拠点を開設している小売ビジネス、または実店舗への展開を進めている場合、3PLとの協力は、倉庫を運営するよりも物流システムへの優れた追加となる可能性が高苦なります。
梱包・資材ハンドリング
梱包・資材ハンドリングの目的は、製品や資材を受け取り、保管し、出荷することです。
エリア内での荷物や資材の輸送、トラックやその他の車両への積み降ろしなどが、このプロセスに含まれます。手作業で行うこともできるし、コンベアベルト、クレーン、フォークリフトなどの機械を使用することもできます。
梱包・資材ハンドリングシステムを設計する際には、以下を考慮する必要があります。
- 取り扱う製品や資材の種類
- 製品や資材のサイズと重量
- 製品や資材の梱包
- 出荷の頻度
- 受け取りおよび出荷ドックの数
- 施設のレイアウト
物流システムのプロセス
物流システムを構築するプロセスを見きましょう。
目標の設定
費用対効果の高い物流プロセスを構築するには、小売業者はまず目標を設定する必要があります。そうすることで、企業固有のニーズに合わせてプロセスをカスタマイズできます。
小売業者が持つ一般的な目標には以下が含まれます。
- 物流コストの最小化
- カスタマーサービスレベルの最大化
- 在庫レベルの削減
コストトレードオフの検討
目標を設定したら、次はコストトレードオフを検討する。コストトレードオフとは、ある領域でコストを削減することで、別の領域でコストが増加する可能性があることを意味します。
コストトレードオフには、輸送や在庫などの変動費と、建物や土地などの固定費が含まれます。目標は、総所有コストを最小限に抑えながら、カスタマーサービスを最大化することです。
下のグラフは、ロジスティクスコスト、輸送コスト、倉庫コストの間の単純な関係を示しています。出荷サイズや倉庫数が増加すると、輸送コストは下がるが、倉庫コストは上がることがわかります。
ある時点で、出荷や倉庫を増やすとロジスティクスコストが増加する可能性がある。物流システムにとって最適な出荷サイズと倉庫数を見つけることは、バランスを取る作業です。
固定費と変動費を把握したら、コストトレードオフを特定し始めることができます。例えば、あるトレードオフは、輸送コストを削減するために在庫レベルを増やすことかもしれません。別のトレードオフは、配送時間とコストを削減するために顧客に近い施設を持つことかもしれません。
コストトレードオフを理解することで、物流システムについて情報に基づいた意思決定ができます。総所有コストを最小化し、収益を改善することが可能になります。
設計の選択肢を特定
物流に関して、小売業者が利用できる設計オプションはさまざまです。ほとんどの小売業者は、外部企業または子会社であるサードパーティロジスティクスプロバイダー(3PL)を利用しています。社内スタッフを使用したり、プロセスの特定の側面(輸送管理など)を専門とする企業にアウトソーシングしたり、アプローチを組み合わせたりすることもできます。
各アプローチにはそれぞれ長所と短所があるため、決定する前にすべての選択肢を慎重に検討することが重要です。例えば、3PLはすべてを社内で行うよりも安価な場合があるが、柔軟性や管理性が低い可能性もある。最終的に、最適なアプローチは小売業者の特定のニーズと目標によって異なります。
独自の物流管理システムを構築する
物流システムの構築は、成功する小売ビジネスを運営するための鍵です。これには、企業が製品を顧客の手に渡す前に行う最終ステップが含まれるからだ。適切に実行されれば、効率的な製品の移動は顧客を喜ばせ、ロイヤルティを構築します。
サードパーティロジスティクス(3PL)パートナーに投資することで、製品が丁寧に扱われ、時間通りに配送されることを保証できます。3PLパートナーは、製品をより速く出荷し、需要により簡単に対応し、収益を改善するのに役立ちます。
安定した物的流通の構築に関するよくある質問
物流の具体例とは?
物流の例としては、企業が倉庫から小売店に商品を輸送することが挙げられます。企業はトラックの車両群を使用して配送を行うこともできるし、輸送をサードパーティロジスティクスプロバイダーにアウトソーシングすることもできます。
物流管理とは?
物流管理とは、原産地から消費地点までの商品の効率的かつ効果的な保管と移動を計画、実施、管理するプロセスです。サプライチェーンマネジメントの中核要素であり、在庫、輸送、倉庫保管、梱包、注文追跡など、製品やサービスの流れのあらゆる側面の管理が含まれます。




