近年、AR技術の向上により、オンラインショッピング体験は進化しています。実際に商品を手に取ることができないECサイトにおいて、ARは消費者にリアルな購買体験を提供し、購入決定を後押しする強力なツールとして機能します。日本でもARを含むXR(クロスリアリティ)市場は、着実に拡大しています。矢野経済研究所の調査によると、2030年にはARスマートグラスの国内出荷台数が35万台に達し、法人向けXRコンテンツ制作も444億円を超える規模になると予測されています。デバイスの普及やコンテンツの充実により、ECにおけるAR体験は今後ますます身近なものになっていくでしょう。
この記事では、ARとは何かを説明し、ECサイトにARを導入することで得られる具体的なメリットや、その活用事例を紹介します。最先端のARを取り入れたネットショップに興味がある人は、ぜひこの記事を参考にしてください。
ARとは
ARとはAugmented Reality(アグメンティッド・リアリティ)の略で、日本語では「拡張現実」とも訳されます。現実世界に仮想空間のコンテンツを重ね合わせて表示する技術を指します。例えば、部屋にスマートフォンをかざすと、家具を配置した際のイメージを実寸大の3Dモデルとして表示できたり、ポスターにかざすと写真が画面上で動き出す、といったことが可能です。ARでは、現実の環境に仮想の情報を重ねて、よりリアルに情報を認識することができます。
AR技術はすでに幅広い分野で活用されていますが、特にEC分野では、顧客体験を向上させる重要なツールとして、今後もさらなる発展が期待されています。
ARをECストアに取り入れるメリット
- 返品率の低下:ARで商品のサイズ感や質感を自宅でリアルに確認できる体験は、EC特有の「イメージ違い」を解消し、返品率を大幅に下げる効果があります。米国のSnap Inc.と調査会社のForesight Factoryによると、AR導入により返品率が年間最大42%削減されたと報告されています。
- エンゲージメントの強化:AR体験は楽しさを提供すると同時に、消費者の高い関心を引き付けることができます。Snap Inc.の調査(英語)では、ARを頻繁に利用する層のブランドへの関心度は50%増加すると報告されています。また利用者の65%が「楽しいから」使っており、ユニークな体験を通じて顧客との深い繋がりを構築することが可能です。
- ブランドの差別化:また上記の調査では、消費者の76%がARを日常生活に役立つ「実用的なツール」として期待しており、導入は先進的なブランドイメージの構築に直結します。また、AR体験を伴う商品はコンバージョン率が94%向上するというデータもあり、競合との圧倒的な差別化を図ることが可能です。
- 精度の高い商品レコメンド:ARはカメラが捉えた顧客の住環境などをAIで分析し、環境やニーズに最適化された商品を提案するパーソナライズ化を可能にします。顧客の空間に完璧にフィットする体験を提供できるため、納得感のあるアップセルや精度の高いレコメンドが実現します。
- 丁寧な商品サポートの提供:ARは、実際の使用環境でのデモンストレーションが可能なため、購入後のアフターサポートとしても有効です。例えば、家具や家電の設置方法をARで視覚的に、かつ楽しく理解してもらうことが可能です。
ARをECストアに導入した成功事例
Rebecca Minkoff
Rebecca Minkoff(レベッカミンコフ)は、NY発のファッションブランドです。同ブランドはShopifyで3D表示とARを商品ページに導入しました。訪問者の中で商品の購入に至った人の割合は、ARを体験しなかった場合と比較して、体験した場合の方が65%高くなっています(英語)。
NARS
NARS(ナーズ)は、フランソワ・ナーズが創設した化粧品ブランドです。同ブランドのオンラインストアでは、ファンデーションなどを試せるARのバーチャルメイクアップツール「NARSマッチメーカー」を導入しました。ビューティーテック企業のパーフェクト株式会社の調査(英語)によると、これによってコンバージョン率は300%アップを達成しました。また、1回当たりの平均注文品数も、10%増加しました。
株式会社ジンズ(JINS)
株式会社ジンズ(JINS)は、アイウエアの企画・販売を手がける企業です。3D試着「JINS VIRTUAL-FIT」や、メガネをかけたままバーチャル試着ができる「MEGANE on MEGANE」を導入しています。視力が弱いため試着姿を鏡で確認できない、という特有の課題を独自のAR技術で解決し、店舗とECをシームレスにつなぐ利便性の高い購買体験を提供しています。
LOWYA
LOWYA(ロウヤ)は、ECを中心に事業を拡大してきた家具・インテリアグッズのブランドです。同社では、AR技術による商品の配置シミュレーションが行えるサービス「LOWYA AR」を提供しています。スマートフォンを使って、商品を実際の部屋に配置した際のイメージを確認できるため、購入前に商品のサイズ感などを把握できます。また、一軒まるごとコーディネートも可能な「LOWYA 360」もリリースされています。
Amazon
Amazon(アマゾン)のスマートフォン対応のアプリで利用できる「ARビュー」は、商品を自宅に原寸大で配置し、様々な角度から確認できるARシミュレーション機能です。家具から神棚に至るまで多岐にわたる商品を扱っており、豊富な選択肢の中から最適な一点をARで選べる体験は、他社にはないブランドの差別化へと繋がります。
NIKE
イベントと組み合わせて使用されたARの好例が、NIKE(ナイキ)の『AIR JORDAN 3』です。2018年、NIKEはNBAオールスターゲーム中の新作発売にあわせて、マイケル・ジョーダンの伝説のダンクシュートをARで再現しました。ジョーダン着用モデルの『AIR JORDAN 3』は、そのままアプリ内で購入できるようになっており、このモデルはわずか23分で完売(英語)しました。
まとめ
この記事では、ECサイトへのAR導入メリットと最新事例を解説しました。AR(拡張現実)は、顧客のサイズ感やイメージ違いといった不安を事前に解消し、返品率の抑制やコンバージョン率の劇的な向上、差別化を含めたブランディングを実現する強力なツールです。この没入感のあるショッピング体験は、顧客満足度を高めるだけでなく、他社に対する決定的な競争優位性となります。次世代のEC戦略として、まずは自社商材に最適なAR体験の提供から検討してみましょう。
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ARに関するよくある質問
ARとは何の略?
ARとはAugmented Reality(アグメンティッド・リアリティ)の略です。
ARをECサイトに導入するメリットは?
- 返品率の低下
- エンゲージメントの強化
- ブランドの差別化
- 精度の高い商品レコメンド
- 丁寧な商品サポートの提供
ShopifyのECストアでARは使える?
Shopifyの3Dスキャナーアプリを使えば、商品をスキャンして3Dモデルを作成できます。購入者は自分の環境での3Dモデルのプレビューや全方向からの閲覧体験が可能です。
ARが効果的な業界や商品は?
ARは、家具、ファッション、化粧品、自動車、家電製品など幅広いオンラインストアで活用されています。購入者が事前に実物を確認したい、サイズ感などを体験したい商品に対して、特に効果を発揮します。
文:Miyuki Kakuish





