小売業を取り巻く環境は、消費者行動の変化とデジタル技術の進化によって大きな転換期を迎えています。2026年に向けては、実店舗とECの融合が進む中で、顧客一人ひとりに最適な体験を提供することが重要となります。特に、データを活用したデジタルマーケティングは、顧客理解を深め、購買行動を促進するうえで重要な役割を担うでしょう。
本記事では、小売業のトレンド5選と、小売業の未来の動向を解説します。
2026年の小売業のトレンド5選

1.オンラインストアの実店舗出店による小売市場の競争激化
オンラインストアと実店舗を組み合わせたオムニチャネル戦略で売上を伸ばしている店舗が増えています。消費者はチャネルを跨いだ購買行動を取るため、企業はオンラインと実店舗のシームレスな顧客体験の提供が競争力の鍵になっています。
ECと実店舗の境界をなくし、顧客視点で最適な体験を提供することを「OMO(Online Merges with Offline)」と呼び、EC業界ではこの発想が主流です。店舗での受け取りやポイントの共通化などの施策を組み合わせることで、リアルとデジタルの垣根を越えた顧客体験を実現でき、各チャネルの特性を生かした相乗効果を高めることにつながります。
2. ショールーミングの人気上昇
実店舗で商品を実際に見たり試したりしたあと、購入はオンラインで行う「ショールーミング」が広がっています。トランスコスモス 調査部公式ブログで発表されるデータによると、消費者がショールーミングを実施する主な理由は、「店舗で実際に見たり触ったりすれば安心だから」と「同じ商品でも実店舗よりネットが安い場合があるから」の2点に集約されています。
店舗でサイズ感や使い心地を確認し、オンラインで在庫の有無や価格を比較して購入できるため、消費者にとって効率的な買い物を可能にします。CASHIER(キャッシャー)が紹介する統計によると、実際にショールーミングを利用する人は43%にのぼっており、一般的な選択肢になっています。
また小売店がこのトレンドを活用し、ショールームとして機能する小売店を設けることは、以下の3つのメリットをもたらします。
- 在庫管理の効率化:消費者の購入はオンライン中心となるため、店舗に大量の在庫を置く必要がなくなり、在庫管理や補充作業の負担を軽減できます。
- 店舗スペースの有効活用:展示用在庫を最小限に抑えることで、体験スペースや接客エリアを拡充できます。
- アップセルとクロスセルの促進:接客時間を十分に確保できるため、顧客のニーズに応じた提案がしやすく、関連商品の購買や単価向上につながります。
3. ポップアップストアの増加
費用対効果の高いマーケティング戦略として、期間限定で出店されるポップアップストアに注目が集まっています。株式会社COUNTERWORKS(カウンターワークス)が実施した調査によると、ポップアップストアは2025年で強化したいマーケティング施策の第三位に挙がり、ポップアップ実施者の中で「ポップアップの実施で効果を得られなかった」と回答した人はわずか1%にとどまりました。
ポップアップストアを実施するメリットは以下のとおりです。
- 短期間・低コストで出店できるため、初期投資やリスクを抑えられる
- 新商品のテストマーケティングがしやすい
- 期間限定の演出による話題性・集客力アップ
- 顧客と直接接点を持ち、リアルな反応や声を収集できる
- SNS拡散や口コミによる、ブランド認知向上が期待できる
- 立地を変えて複数エリアで市場調査ができる
- eコマースと連動させることで購買導線を広げられる
- 季節・イベント限定商品のプロモーションに活用できる
4. 消費者のサステナビリティへの意識の高まり
環境や資源に配慮したサステナブルな取り組みが求められている現代で、EC業界でもサステナビリティやSDGsへの関心が高まっているため、環境に配慮した取り組みが消費者から支持される傾向にあります。
しかし、実際にはサステナビリティを意識した取り組みまで手が回っていない小売業者が多いのも現状です。以下のような取り組みをすることで、競合他社と差別化を図ることができます。
- エコパッケージの活用
- 環境負荷の低い製造方法の商品を仕入れる
- 再利用可能な商品の製造
- 簡易包装の実施
- まとめて商品を配送する
消費者は製品やサービスだけでなく、企業の姿勢や取り組みも評価の対象としています。そのため、サステナビリティに対する取り組みを適切に伝えることは、顧客満足度の向上につながります。
5. パーソナライズされたショッピング体験
消費者は自分の好みや価値観に合った商品・サービスを求める傾向が高まっていることから、顧客データを活用したパーソナライズドマーケティングも業界のトレンドです。Contentsful(コンテンツフル)が実施した調査(英語)によると、消費者の77%がパーソナライズされた顧客体験を期待しており、パーソナライゼーションを導入したオンライン小売業者の98%が平均注文額(AOV)を向上させていました。
さらに、ウェブサイト・アプリ・メール・SNSなど、複数の接点から得られるデータを踏まえて顧客予測分析をすることで、より精度の高い顧客理解が可能になります。これにより、ECサイト上で関心度の高い商品を優先的に表示したり、個別最適化されたメール配信やリターゲティング広告を実施したりでき、顧客一人ひとりにリアルタイムで最適化されたパーソナライズな体験を提供できます。
ECサイトにおけるパーソナライゼーションの主な手法として、以下のような取り組みが挙げられます。
- 商品レコメンドのパーソナライズ化:サイト内で「あなたへのおすすめ」等の欄を設け、購入商品や閲覧商品が似ている商品を表示
- 動的コンテンツの最適化:ユーザーの行動・所在地・人口統計データなどに基づいて、ウェブページ上の表示内容を切り替え
- メールマーケティングの実施:カゴ落ちメールや記念日メールなど、メール配信を個々の行動・購入履歴に基づいて最適化
- AI駆動のチャットボットの導入:パーソナライズされたカスタマーサポートを提供
小売業はなくなるのか

小売業がなくなることはありません。EC市場の拡大により、実店舗の将来を不安視する声もありますが、近年ではオンライン専業だったブランドが、ポップアップストアやショールームなどの実店舗を展開する動きが広がっています。
デジタルとリアルを融合させたこのような取り組みは、顧客体験の向上やブランドへの深い共感につながり、現代の小売業における新たなスタンダードとなりつつあります。
小売業の未来の市場予測

経済産業省の調査によると、国内の小売業・商品販売額は2025年上期で約78兆円を達成し、前年同期比で2.7%上昇しました。またTechSci Research(テックサイ・リサーチ)の調査によると、世界の小売市場は、2024年の約25.8兆ドルから2030年には約48.2兆ドルに成長すると予測されています。国内も世界と同様に、今後も市場規模が拡大する見込みはあるものの、人口減少・少子高齢化等のあらゆる社会問題の影響次第では見立てが変動する可能性があります。
AIの進化とパーソナライゼーションは今後も小売業にとって重要なキーワードになると考えられますが、加えて以下の技術も小売り業界のトレンドを左右すると考えられます。
- 越境EC:海外に市場を拡大して販売し、人口規模が大きく、ニーズが見込める市場にリーチ可能
- AR(拡張現実):statista(スタティスタ、英語)によると、今年のモバイルARの利用者は全世界で10.7億人で、2028年まで継続的にユーザーが増加すると予想
- 3D技術:Rebecca Minkoff(レベッカ・ミンコフ)は、ECサイトに3D商品表示を導入した結果、閲覧者のカート追加率が44%、購入率が27%向上
まとめ
消費者は商品・サービスの利便性だけでなく、体験価値や共感を重視するようになっています。そのため、デジタル技術を駆使して顧客を深く理解し、一人ひとりに最適な価値を提供することが不可欠となっています。オムニチャネル戦略にとどまらず、ショールーミングやポップアップストアの活用、サステナビリティへの対応、データを活用したパーソナライズ施策なども、優位性を築くうえで重要な要素となります。
消費者の期待を超える体験を提供するために、ぜひ本記事を参考にして対策を練ってみてください。
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よくある質問
小売業とは?
卸売業者などから仕入れた商品を消費者に販売するBtoCのビジネススタイルです。主な小売業としては以下の例が挙げられます。
- コンビニエンスストア
- 専門店
- 家電量販店
- ドラッグストア
- スーパーマーケット
2026年の小売業のトレンドは?
- オンラインストアの実店舗出店による小売市場の競争激化
- ショールーミングの人気上昇
- ポップアップストアの増加
- 消費者のサステナビリティへの意識の高まり
- パーソナライズされたショッピング体験
小売業が今後注目すべき技術は?
- AI
- OMO(Online Merges with Offline)
- 越境EC
- AR(拡張現実)
- 3D技術
実店舗は今後も必要?
必要です。ただし、「商品を売る場所」から「体験を提供する場所」へと役割が変化しています。ショールーミングやポップアップストアのように、ブランドの体験価値を高める店舗は、今後も欠かせないでしょう。
文:Ryutaro Yamauchi





