実店舗とECを運営する小売業では、店舗とオンラインストアで在庫管理や顧客情報が分散し、「在庫があるはずの商品を案内できない」「購入履歴を生かした接客ができない」といった課題が生じることがあります。また、SNSやモバイルアプリなど顧客との接点が増える中、それぞれのチャネルを個別に運営していると、一貫した顧客体験を提供することは容易ではありません。
こうした課題を解決する方法として注目されているのが、オムニチャネルです。店舗とEC、在庫管理、顧客情報、会員サービスなどを連携することで、顧客満足度の向上や販売機会の拡大だけでなく、リピート購入の促進や顧客との継続的な関係構築にもつながります。
本記事では、日本企業を中心とした小売業のオムニチャネル成功事例10選を紹介します。
CRMツールによる顧客情報の一元管理、LINE(ライン)やモバイルアプリを活用した顧客コミュニケーションなど、各社がどのような施策を導入しオムニチャネルを実現しているか、自社の取り組みの参考にしてください。

国内小売業のオムニチャネル成功事例10選
- カンロ
- BAKE(ベイク)
- HEAVEN Japan
- 生活の木
- PAPABUBBLE(パパブブレ)
- NOSE SHOP(ノーズショップ)
- 三陽商会
- サンドラッグ
- CLASSICS the Small Luxury(クラシクスザスモールラグジュアリー)
- Allbirds(オールバーズ)
1. カンロ
のど飴やピュレグミなどで知られるカンロは、店舗、EC、LINEを連携し、顧客データを一元管理するオムニチャネル基盤を構築しています。
同社には、ECサイトやポップアップストアなどに顧客情報や売上情報が分散しやすいという課題がありました。そこで、公式オンラインショップ「Kanro POCKeT(カンロポケット)」をShopify Plus(ショッピファイプラス)で構築するとともに、店舗ではShopify POS(ショッピファイポス)を導入し、ECと実店舗の在庫や売上、顧客情報を一元管理できる環境を整備しました。さらに、LINEログインを組み合わせることで、オンラインストアやポップアップストアを含む複数の顧客接点を統合しています。
これにより、店舗、EC、LINEを横断した顧客データ活用が可能となり、販売チャネルを問わず継続的なCRM施策を展開できるようになりました。その結果、EC全体の流通総額(GMV)は前年比175%、リピート率は約1.3倍へ向上し、LINE連携ユーザーも1万人を突破しています。
2. BAKE
焼きたてチーズタルト専門店など複数のスイーツブランドを展開するBAKE(ベイク)は、店舗とECを横断した会員基盤を構築し、一貫した顧客体験を提供しています。
同社はECサイトをShopify(ショッピファイ)へ刷新するとともに、Omni Hub(オムニハブ)を導入し、約70店舗とオンラインストアの会員情報、ポイント情報を統合しました。さらに、LINEログインを組み合わせることで、ブランドや購入チャネルを問わず共通の会員サービスを利用できる環境を整備しています。
その結果、リニューアルから約1か月でLINEログイン登録者は約1.4万人に達し、その後LINE友だち数は4万人を突破しました。また、LINEログイン経由でターゲットユーザーの約8割へアプローチできるようになっています。
会員情報を一元化することで、複数ブランドを展開する企業でもシームレスな顧客体験を実現している好例です。
3. HEAVEN Japan
補整下着ブランドを展開するHEAVEN Japan(ヘブンジャパン)は、店舗での接客体験を購入後のコミュニケーションまで広げることで、顧客との継続的な関係構築に取り組んでいます。
同社はShopifyを基盤に、店舗への来店やECでの購入を起点として、レビュー依頼やポイント失効通知などを顧客一人ひとりに合わせて自動配信し、購入後もチャネルを横断した継続的なコミュニケーションを実現しています。また、LINEを活用した紹介施策「スマイルリレー」では約3か月で230人の新規会員登録を獲得しました。
紹介経由の顧客は通常顧客と比べて客単価、リピート率ともに約1.5倍を達成し、休眠顧客向けLINE配信ではCPA(コンバージョン単価)約17円という成果も実現しています。
それぞれのチャネルを横断した一貫性のある顧客体験を提供することで、オンラインとオフライン双方で継続的な関係構築を実現し、LTV(顧客生涯価値)の向上につなげています。
4. 生活の木
アロマやハーブ、ウェルネス関連商品を展開する生活の木は、ECと実店舗を連携させ、オンラインとオフラインの双方を活用したオムニチャネル施策を推進しています。
LINEを新たな顧客接点として他チャネルと統合し、店頭での会員登録をLINEログインで簡略化したことで、導入から約3か月でLINE会員は1万人を突破しました。その約半数は新規会員であり、ブロック率も約5%に抑えられています。
さらに、ECで初めて購入した顧客に対する施策を、ECでの再購入促進から実店舗への来店促進へ切り替え、オンラインとオフラインを融合したコミュニケーションを行った結果、広告経由のEC初回購入者の平均購入回数は約1.3回から約3.3回へ向上しました。
オンラインとオフラインを別々に扱うのではなく、複数チャネルを相互に活用することで、購入体験の各段階で一貫した顧客体験を提供し、継続的な来店やリピート購入につなげています。
5. PAPABUBBLE
アートキャンディ専門店のPAPABUBBLE(パパブブレ)は、店頭で獲得した顧客をECやLINEへつなぐ会員基盤を構築し、店舗とオンラインを横断した顧客体験を提供しています。
同社では、店頭の二次元コードから会員登録とLINE友だち追加を完結できる仕組みを導入し、オフラインの接点をシームレスにオンラインにつなげられる環境を整備しました。さらに、Shopifyのアプリを活用して会員ランクや特典、店舗受け取り特典などを一元管理し、店舗とECのどちらを利用しても同じ会員サービスを受けられるようにしています。
こうしたチャネル横断のオムニチャネル体験設計により、会員証を提示するハードルが下がり、提示するメリットも明確になりました。その結果、施策開始から約2か月で、会員証提示率の高い店舗では来店者の約7割が会員証を提示するようになり、店頭接点をLINEへ接続したことで、LINE連携ユーザーも1日あたり約1,000人のペースで増加しました。
店舗で生まれた顧客接点をデジタルへ広げ、購入後も継続的な情報発信や特典提供を行うことで、オフラインとオンラインの双方で再購入を促進できる環境をつくっています。
6. NOSE SHOP
ニッチフレグランス専門店のNOSE SHOP(ノーズショップ)は、店舗とECの在庫情報、会員情報を統合し、購入チャネルを問わず一貫した購買体験を実現しています。
同社は、店舗とオンラインストアの在庫を一元管理したうえで、Omni Hubを導入し、店舗とECの会員情報も統合しました。これにより、オンラインで会員登録した顧客も店舗で同じ会員サービスを利用でき、購買履歴を横断的に管理できる環境を整えています。
こうしたチャネル統合により、顧客は店頭で購入した商品の情報をオンラインストアでも確認できるようになったため、店舗来店者の約15%がオンラインストアの会員になりました。店舗でも、スタッフがECを含めた購買履歴を把握しながら接客できるようになったことで、パーソナライズされた商品提案や継続的なCRM施策を展開しやすい体制を構築しています。
7. 三陽商会
「MACKINTOSH LONDON(マッキントッシュロンドン)」や「Paul Stuart(ポール・スチュアート)」などのブランドを展開する三陽商会は、オンラインで商品を検討し、店舗で試着、購入できる体験を提供することで、ECと実店舗をつなぐオムニチャネル戦略を推進しています。
ブランドそれぞれのECサイトを運営していた同社は、EC基盤をShopify Plusへ移行し、ブランドをまたいで一貫した購買体験を提供できるようにしました。また、顧客の利便性をさらに高めるOMO施策として「TRY&PICK(トライアンドピック)」を導入しました。オンラインストアで気になった商品を店舗へ取り寄せて試着できる仕組みを構築することで、サイズ感や着心地を確かめてから購入したいというニーズに対応しています。
その結果、流通総額(GMV)は115%、ECサイト全体のセッション数は120%、定価商品の売上は120%へ向上しました。また、「TRY&PICK」の利用件数は従来の店舗取り置きサービスと比べて約5倍に増加しています。オンラインの利便性と店舗ならではの接客を組み合わせることで、チャネルを横断した購買体験を実現した好例です。
8. サンドラッグ
全国でドラッグストアを展開するサンドラッグは、店舗とECの顧客データを統合し、一人ひとりに合わせた情報提供を実現するオムニチャネル基盤を構築しています。
同社はShopify Plusを活用して「サンドラッグ Online Store」を刷新し、オンラインストアと会員向けマイページを統合しました。さらに、実店舗とECの購入履歴を一元管理するとともに、店舗検索機能を通じたファーストパーティデータの取得や、マーケティングオートメーション(MA)を活用したCRM施策を展開できる環境を整えています。
これにより、店舗、ECを問わず顧客の購買行動を把握し、それぞれに適した情報配信や販促施策を実施できるようになりました。チャネルごとに分断されがちな顧客情報を統合することで、継続的なコミュニケーションを支える基盤を構築し、実店舗とECが相互に価値を高め合う仕組みを実現しています。
9. CLASSICS the Small Luxury
ハンカチ専門店のCLASSICS the Small Luxury(クラシクスザスモールラグジュアリー)は、店舗とECの顧客情報や在庫情報を統合し、専門店ならではの接客を通してオムニチャネル化を進めています。
同社はShopifyとShopify POSを活用することで、オンラインストアと実店舗の顧客情報や在庫情報を一元管理できる環境を構築し、店舗スタッフがオンラインでの購入履歴やクーポン情報を確認して一人ひとりに合わせた接客や提案ができるようにしました。また、一部店舗ではオンラインストアで購入した商品の店舗受け取りにも対応し、ECと店舗を横断した利便性の高い購買体験を提供しています。
まずは1店舗で運用を検証したうえで全店舗へ展開しており、専門店や中小規模の小売事業者でも、段階的にオムニチャネルへ取り組めることを示した好例といえるでしょう。
10. Allbirds
サステナブルなD2CシューズブランドのAllbirds(オールバーズ)は、オンラインストアと実店舗をシームレスにつなぎ、購入チャネルを問わず一貫したブランド体験を提供しています。
同社は、オンラインで選んだ商品を希望の実店舗へ取り寄せ、試着してから購入を検討できるサービスを導入し、オンラインストアと実店舗を連携した購買体験を提供しています。店舗在庫を自宅へ代引き発送するサービスもあり、顧客はチャネルをまたいで商品を検討し購入できます。また、購買履歴をもとにパーソナライズしたサイト表示や、SNSやメールを活用したコミュニケーションを展開し、オンラインとオフラインが融合した顧客接点を創出しています。
こうした取り組みにより、実店舗、EC、SNS、メールを組み合わせたオムニチャネル体験を実現し、顧客が利用するチャネルを問わず、一貫したブランド体験を提供しています。
まとめ
今回紹介した事例から分かるように、オムニチャネルの成功には、店舗とEC、LINE、モバイルアプリなど複数のチャネルを連携し、顧客情報や在庫情報を一元管理する基盤づくりが重要です。また、店舗受け取りや会員情報の統合、購入後のコミュニケーションなど、それぞれのチャネルの特性を生かしながら、一貫した顧客体験を提供している点も共通しています。
Shopifyは、Shopify POSやShopify Plusをはじめとする機能やアプリを活用することで、店舗とECの在庫、顧客、注文情報を連携し、オムニチャネル基盤を構築できます。今回紹介した事例も参考にしながら、自社の課題や目的に合った施策を取り入れ、一貫した顧客体験の実現につなげていきましょう。
小売業のオムニチャネルにおけるよくある質問
オムニチャネルとは?
オムニチャネルとは、実店舗、ECサイト、SNS、モバイルアプリなど複数のチャネルを連携し、どのチャネルから利用しても一貫した購買体験を提供するマーケティング手法です。
小売業でオムニチャネルが重要な理由は?
小売業でオムニチャネルが重要な理由は、複数のチャネルを利用しながら商品を比較、購入する現代の消費者の離脱を防ぐには、店舗とECの在庫管理や顧客情報を連携し一貫した購買体験を提供する必要があるからです。
小売業のオムニチャネルにおいて有効な施策は?
小売業のオムニチャネルでは、店舗とECの在庫管理や顧客情報の一元管理、LINEやモバイルアプリを活用した顧客コミュニケーション、店舗受け取りや店舗取り置き、CRMを活用したリピート購入促進などの施策が有効です。




