顧客獲得は、ECサイトの成長を左右する重要な要素といえます。一方で、近年は広告費の高騰などを背景に、新規顧客を獲得するだけでなく、既存顧客との関係を維持する重要性も高まっています。
そこで本記事では、ECサイトにおける既存顧客維持と新規顧客獲得の違いを整理したうえで、それぞれの役割や優先順位、さらに売上を伸ばすための具体的な戦略について解説します。
既存顧客維持とは
既存顧客維持とは、すでに商品やサービスを利用したことのある顧客との関係を継続し、再購入や契約更新を促すためのマーケティング活動です。リピート購入促進による顧客生涯価値(LTV)の向上や、サブスクの解約率低減などの取り組みが当てはまります。既存顧客は商品理解や信頼関係が形成されているため、比較的低コストで売上につながりやすく、安定した収益の確保を実現します。

新規顧客獲得とは
新規顧客獲得とは、これまで取引のなかった層に自社の商品やサービスを認知してもらい、新たな顧客として取り込むためのマーケティング活動です。企業が継続的に成長するためには、顧客数を増やし市場を拡大していくことが欠かせません。そのため、新規顧客獲得ではブランド認知の拡大や購買機会の創出につながる、新たな顧客との接点を生み出すマーケティング戦略が重要となります。
既存顧客維持と新規顧客獲得における「1:5の法則」とは
1:5の法則とは、新規顧客を獲得するためのコストが、既存顧客を維持するコストの約5倍かかるとされるマーケティングの考え方です。「世界で最も影響力のあるコンサルタント25名」の一人にも選ばれたフレデリック・F・ライヘルド(英語)が、経験則から提唱しました。
その要因は、新規顧客の獲得には、広告や営業活動など多くの費用や時間が必要になることにあります。投資利益率(ROI)の観点からは既存顧客維持の方が効率は高いといえますが、新規顧客の獲得ができなければビジネスは先細りしていくため、自社の事業フェーズや状況に応じた両者のバランスが重要となります。

既存顧客維持と新規顧客獲得の優先順位
既存顧客維持と新規顧客獲得はどちらか一方だけを優先すればよいものではなく、事業の成長段階や顧客基盤の状況に応じて重点を変えることが重要です。ここでは、それぞれを優先すべきタイミングについて解説します。
既存顧客維持を優先すべきタイミング
既存顧客維持を優先すべきなのは、すでに一定の顧客基盤がある場合です。特に事業が成熟している企業や、継続利用が前提となるビジネスモデルでは、既存顧客との関係強化で安定した売上を確保していくことが重要になります。
また、既存顧客はクロスセルやアップセル、リピート購入を促進することで売上を拡大させることができます。満足度の高い顧客は口コミや紹介によって新たな顧客を呼び込む可能性もあるため、特に経費削減したい企業にとってはコスト効率の高いマーケティング施策といえます。
新規顧客獲得を重要視すべきタイミング
新規顧客獲得を優先すべきなのは、事業の立ち上げ期や成長期などのタイミングです。特に、ブランドの構築段階では新規顧客の開拓につながる施策に大きな投資を行う必要があるでしょう。また、事業を継続する中では既存顧客の離脱を完全に防ぐことは難しいため、その影響を補う意味でも新規顧客獲得の取り組みは欠かせません。
ただし、新規顧客獲得には既存顧客維持よりもコストがかかる傾向があるため、顧客獲得単価(CAC)などの指標をしっかりと把握しながら、自社の予算や目標、業界の平均顧客獲得コストも加味して計画的に進めることが重要です。

ECサイトで既存顧客を維持するための7つの戦略
- 会員アカウント機能の活用
- 継続的なコミュニケーション
- ロイヤルティプログラムの導入
- サブスクリプション(定期購入)の導入
- 顧客の購買履歴に基づいた商品レコメンド
- 限定商品やキャンペーンの実施
- カスタマーサポートの強化
1. 会員アカウント機能の活用
顧客が購入履歴や注文状況を確認できる会員アカウント機能を整備することで、再購入のハードルを下げることができます。購入履歴から簡単に再注文できる仕組みや、支払い情報の保存などにより、スムーズな購買体験を提供できます。
2. 継続的なコミュニケーション
メルマガやLINE(ライン)、SMS(ショートメッセージサービス)などのメッセージングチャネルで定期的に情報を届けることで、顧客との接点を維持しましょう。購入後フォローやカゴ落ちメール、再購入リマインドなどを配信することで、再購入の機会を生み出します。
3. ロイヤルティプログラムの導入
ポイント制度や会員ランク制度、既存顧客向けクーポンなどを導入することで、顧客のロイヤルティを高められます。継続利用した方が得だと顧客に印象付けることで、競合他社よりも選ばれやすくなります。
4. サブスクリプション(定期購入)の導入
サブスクリプションモデルを導入することで、定期的な購入を促しやすくなります。特に消耗品や日用品では定期購入と相性が良く、顧客にとっては買い忘れ防止、企業にとっては安定した売上の確保といったメリットをもたらします。
5. 顧客の購買履歴に基づいた商品レコメンド
購買履歴や閲覧履歴をもとに関連商品をレコメンドすることで、アップセルとクロスセルを促進できます。パーソナライズされた提案は顧客体験の向上にもつながります。
6. 限定商品やキャンペーンの実施
新商品や季節限定商品、数量限定商品などは既存顧客の購買意欲を高める効果があります。また既存顧客向けの割引キャンペーンやプロモーションも、再購入のきっかけづくりとして有効です。
7. カスタマーサポートの強化
カスタマーサポートの質を高め、顧客の声に迅速に対応することも重要です。レビューやフィードバックを収集し、顧客体験の改善につなげることで、ブランドへの信頼が高まり継続利用につながります。

ECサイトで新規顧客を獲得するための7つの戦略
- 検索流入を増やすSEO対策
- 有料デジタル広告の活用
- コンテンツマーケティング
- SNSマーケティング
- インフルエンサーや他ブランドとのコラボレーション
- 初回購入を促すキャンペーン
- オフラインイベントやポップアップの開催
1. 検索流入を増やすSEO対策
検索エンジン経由の流入は、ECサイトのKPIとしても重要な指標とされます。例えば、タイトルタグやメタディスクリプションの改善、適切なキーワード設定などのSEO施策を行うことで、商品ページやカテゴリページへの検索流入を増やすことができます。
2. 有料デジタル広告の活用
有料広告は、短期間で新規顧客にアプローチできる施策です。インターネット検索に連動するGoogle(グーグル)ショッピングやリスティング広告、Facebook(フェイスブック)広告、TikTok(ティックトック)広告などを活用することで、ターゲットユーザーに効率的に商品を訴求できます。
3. コンテンツマーケティング
ブログ記事や商品レビュー、ハウツー記事などのコンテンツを作成することで、潜在顧客にブランドや商品を知ってもらうことができます。SEOと組み合わせることで、検索流入の増加も期待できます。
4. SNSマーケティング
Instagram(インスタグラム)、TikTok、X(エックス)などのSNSを活用して情報発信を行うことで、ブランド認知を高めることができます。SNSは拡散力が高く、商品やブランドの魅力を視覚的に伝えやすいため、ECサイトにとって重要な集客チャネルです。
5. インフルエンサーや他ブランドとのコラボレーション
自社と似た顧客層を持つブランドとのコラボレーションや、インフルエンサーとの提携も有効な戦略です。特にマイクロインフルエンサーはフォロワーとの信頼関係が強く、商品の紹介を通じて購買意欲を高めやすい特徴があります。
6. 初回購入を促すキャンペーン
無料サンプルの提供や初回限定クーポン、割引キャンペーンなどを実施することで、初めて購入するユーザーの心理的ハードルを下げることができます。ECサイトでは初回購入のきっかけづくりとして広く活用されています。
7. オフラインイベントやポップアップの開催
オフラインイベントの開催やポップアップストアなども、新規顧客獲得に効果的です。実際に商品やブランドに触れてもらうことで、購入・利用する際の安心感につながります。
まとめ
ECサイトで売上を伸ばすためには、既存顧客維持と新規顧客獲得の両方に取り組むことが重要です。既存顧客維持はリピート購入やLTVの向上につながり、安定した売上を支えます。一方、新規顧客獲得は顧客基盤を広げ、事業成長を後押しする重要な施策です。また、1:5の法則が示すように、新規顧客の獲得は既存顧客維持よりコストが高い傾向があります。そのため、事業の状況に応じて両者のバランスを意識したマーケティング戦略を実行することが、ECサイトの持続的な成長につながります。
既存顧客維持と新規顧客獲得に関するよくある質問
既存顧客維持と新規顧客獲得の違いは?
既存顧客維持は、すでに購入経験のある顧客との関係を継続し、リピート購入や継続利用を促す取り組みです。一方、新規顧客獲得は、これまで利用したことのない顧客を新たに獲得するための活動を指します。両者は役割が異なり、売上を安定させるには両方のバランスが重要です。
既存顧客維持のメリットは?
- リピート購入による売上の安定
- 新規顧客獲得よりもコストが低い
- 口コミや紹介による新規顧客獲得につながる
- 顧客満足度の向上によるブランドロイヤルティの強化
新規顧客獲得のメリットは?
- 市場シェアの拡大につながる
- 売上成長のスピードを高められる
- 新しい顧客層やニーズを発見できる
- ブランド認知度を向上させられる
既存顧客維持と新規顧客獲得はどちらを優先すべき?
既存顧客維持と新規顧客獲得は、どちらか一方だけを優先するのではなく、事業の成長段階に応じてバランスよく取り組むことが重要です。
- 既存顧客維持:顧客基盤がある企業。低コストで売上安定やLTV向上に有効
- 新規顧客獲得:立ち上げ期や成長期。顧客数拡大や市場シェア拡大に重要
文:Ryutaro Yamauchi





