B2B家具市場では、展示会や対面取引が依然として残りつつも、ECでの購買が主流になっています。この背景にあるのは、購買担当者の世代交代です。デジタルネイティブ世代が購買担当の主軸となった現代では、利便性や操作性を重視したデジタル取引への期待が高まっています。B2B家具市場で成功するには、商品の選定から見積もり、発注までをシームレスに行えるB2B ECサイトの構築が欠かせません。
本記事では、B2B家具市場のトレンドと要因に加えて、B2B家具のEC化によるメリットや課題を解説します。B2B家具向けECサイトの構築手順や事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

B2B家具の市場規模とトレンド
Mordor Intelligenceの調査によると、世界のオフィス家具市場は2025年に781億米ドルに達し、2030年までに1,090億円へと拡大すると予測されています。ハイブリッドワークの普及により、需要は今後も安定的に伸びていくと見られています。
B2B家具市場では、市場規模の拡大と同時にEC化も進んでいます。経済産業省の「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の家具、インテリア分野のEC化率は32.58%を記録したほか、B2B全体のEC化率も前年から3.1ポイント増加し43.1%となりました。
こうした背景から、家具ブランドにとって、従来の対面販売に加えてECを活用した販売チャネルの構築が重要になるといえるでしょう。デジタル上でスムーズに商品を選定・購入できる環境をつくり、大口注文や継続注文などのB2B特有のニーズに応える仕組みを整えることで、売り上げ向上につなげられる可能性があります。

B2B家具市場でEC需要が高まっている要因
- 若年層バイヤーの台頭と期待の変化:デジタルネイティブであるZ世代とミレニアル世代が購買担当の主軸となっており、効率的で利便性の高いオンライン購入の需要がさらに高まっています。
- ハイブリッド型購買行動の広がり:店頭で実物を確認した後にオンラインで購入する「ショールーミング購買」は、実物確認の必要性が高い家具市場と親和性が高く、広がりを見せています。
- 業務プロセスのデジタル化:セルフサービスポータル、リアルタイムの在庫情報、デジタルでの素材選定など、業務プロセスのデジタル化が進んだことで、注文、再注文、承認管理などを迅速かつ柔軟に行えるシステムがこれまで以上に求められています。

B2B家具のEC化で得られるメリット
- 営業チームの効率化:セルフサービス注文により、営業担当は反復的な受注処理ではなく、利益につながる商談や新規顧客開拓に集中できます。
- 顧客維持率とリピート率の向上:再注文プロセスの簡素化とリマインダー通知の自動化により、継続的なECサイト利用を促すことができます。
- デジタル経由の新規顧客獲得:キャンペーン運用の効率化と自動化により、ECチャネルが優れた新規市場開拓手段になります。
このように、ツールを使いECサイトを最適化することで、営業担当の負担削減につながるほか新規顧客の獲得やLTVの向上にも貢献し、売り上げの増加が期待できます。

B2B家具ECが直面する課題と改善策
ランニングコストと実現性
B2B家具のEC化で課題となるのは、コストの高さです。企業の購買担当者にとって、スムーズなチェックアウトフロー、直感的な操作性、シンプルで分かりやすいデジタルプラットフォームなど、消費者として享受しているのと同じ円滑な購買体験に加えて、次のような点を求めています。
企業にとって、これらの要件をすべて満たすECシステムを構築することはコストがかかるだけでなく、実現が難しい場合もあります。初期費用と運用負担を抑えるには、必要機能を段階的に導入できるASP型ECプラットフォームを活用し、見積もり管理や3D表示などを外部サービスと連携させる方法が有効です。
リアルタイムな生産管理
B2B家具のEC化では、注文から配送までの状況を正確に把握・管理しなければなりません。カスタム家具の場合、リードタイムや生産スケジュール、物流をリアルタイムに反映しながら受注を管理する必要があり、適切に対応できなければ納期遅延につながるリスクがあります。生産管理システムや物流システムをAPI連携し、在庫、生産、配送状況をリアルタイムで可視化する仕組みを整備することが重要です。
プロジェクト単位の発注管理への対応
B2B家具をEC化する場合、案件単位での発注管理ができるよう対応しなければなりません。B2Bの場合、オフィス移転や店舗内装などの案件ごとに、複数の商品をまとめて発注・管理するケースもあります。その際、発注担当者だけでなく上司など複数の関係者が関与し、それぞれの役割に応じて商品の選定や承認が行われます。こうしたニーズに応えるには、承認フローや権限管理を備えたB2B向けECプラットフォームの活用が有効です。
オムニチャネル対応
実店舗やショールームを運営している場合は、オムニチャネル運営も重要です。実店舗とECサイトで在庫にズレが生じていたり、取り扱っている商品が統一されていなかったりすると、顧客満足度の低下につながりかねません。全チャネルで一貫した購買体験を提供するためには、ECサイトをPOSシステムや在庫管理システムと統合し、オフラインとオンラインの双方で在庫や顧客データを一元管理できる環境を整備することが重要です。

B2B家具のECプラットフォームを選ぶ際のポイント
B2B家具のEC化を検討している場合、コスト、拡張性やカスタマイズ性、機能性の3つのポイントを軸にプラットフォームを比較検討することで、自社の事業に適したサービスが選びやすくなります。
- コスト:B2B ECの導入コストはサービスによって数万円~数百万円にまで及ぶことがあります。初期費用や月額使用料などを含めた総所有コスト(TCO)で比較することが重要です。
- 拡張性やカスタマイズ性:取引規模の拡大や自社の事業内容に応じた運用ができるプラットフォームを使うと、安定した事業運営につながります。
- 機能性:在庫管理や顧客管理、配送設定など、家具B2B ECで必要な機能が整備されているかを確認しましょう。UIのわかりやすさも重要なポイントです。

B2B家具ECサイトの運営に役立つShopifyの機能
Shopify(ショッピファイ)では、B2B家具ブランド向けのEC機能を数多く提供しています。主な機能は以下のとおりです。
- B2B専用テーマ:TradeなどのB2Bに特化したテーマを活用することで、簡単にB2B ECサイトが構築できます。
- 顧客別のカスタムカタログ:複数のカタログを作成できるため、顧客ごとに商品や価格を設定し、最適な商品と条件を提示できます。
- 決済条件のカスタイマイズ:即日決済や30日後決済など、支払いに関する条件を顧客ごとに設定できます。
- 手動の決済方法:クレジットカードでの支払いができない顧客向けに、郵便為替や銀行振り込みなどの手動での決済手段を設定できます。
- 支払いリマインダー:設定した支払期日に、リマインダーを送信できます。
- 大口注文の割引:数量による割引を設定できます。
- クイック注文リスト:複数の商品やバリエーションをワンクリックでカートに追加できる機能です。
- 注文履歴からの再注文:手動で新しい注文をせずに、顧客アカウントから簡単に再注文できます。
- 外部システムとの連携:統合基幹業務システム (ERP)や顧客関係管理(CRM)などの外部システムと連携させて、顧客データ、注文、在庫、商品カタログ、価格設定情報を同期できます。
- セルフサービス返品:顧客が直接顧客アカウントから返品リクエストを送信できるよう設定できます。

B2B家具ECサイトの構築手順
1. 業務フローの整理と要件定義を行う
まず、営業、注文受付、請求、出荷、入金管理、在庫管理までの業務フローを整理し、どこをEC化するか検討します。ECで自動化する部分が決まったら、必要な機能を洗い出します。機能を洗い出す際は、次の2つのカテゴリーに分けて整理しておきましょう。
- 機能要件:ECサイトの基本的な動作にかかわる具体的な機能を定めます(例:ユーザー登録や商品検索、カート機能、決済)
- 非機能要件:ECサイトの品質や性能にかかわる要件を定めます(例:セキュリティや表示速度、拡張性)
必要な機能を把握できたら、「必須」「あったら尚よし」「任意」など優先順位をつけておくことで、ECサイトの構築をスムーズに進めることができます。
2. ECプラットフォームやパートナーを選定する
要件が明確になったら、次に使用するECプラットフォームやパートナーを選定します。ECサイトの主な構築方法は、次のとおりです。
- ASP:クラウド上のプラットフォームをレンタルしてECサイトを構築する手法です。ShopifyやSTORES、BASEが代表的なサービスです。費用を払えば標準的なEC機能一式を利用できるほか、サーバー管理やセキュリティ対策などを自社で行う必要がないため、コストを抑えながら手軽にECサイトを運営できるメリットがあります。
- ECパッケージ:B2B ECに必要な機能が備わったソフトフェアを自社サーバーやクラウドに設定して利用する手法です。ASPと異なり、自社仕様にカスタマイズしやすいほか、外部システムとも連携しやすい点が特徴です。
- オープンソース:公開されているソースコードを使って、自社の業務フローに合わせたECサイトにカスタマイズする手法です。初期費用を抑えながら、自由度の高いECサイトを構築できる点がメリットです。
- フルスクラッチ:既存のECシステムを一切使わずに、自社専用のB2B ECサイトをゼロから構築する手法です。カスタマイズの自由度が高い点や将来的な事業戦略に合わせて機能を拡張しやすい点が強みです。
選定する際は、要件定義で定めた必要な機能や性能が実現できるかどうかに加えて、これまでの実績やサポート体制を踏まえて、候補を絞り込みましょう。デモや無料トライアルを活用すると、導入後のギャップを防ぎやすくなります。
3. システム設計や機能仕様書を作成する
次はシステム設計や機能仕様書の作成です。B2B家具ECでは、法人取引やカスタマイズ対応など、一般的なECサイトにはない要件を考慮する必要があります。
例えば、次のような機能を仕様書に整理しましょう。
- 法人価格や掛け率の設定
- 承認フロー
- 見積もり依頼機能
- 大口発注への対応
- 素材、サイズ、仕上げなどのカスタマイズ機能
- リアルタイムプレビュー
- 最新の在庫情報の表示
- 基幹システムや在庫管理システムとの連携
この段階で必要な機能や画面構成、データ連携方法を明確にしておくことで、開発や運用をスムーズに進められます。
4. サイトを実装してテストを行う
設計が完了したら、サイトを開発します。設計と実装にズレが生じないよう、実装後は動作確認やテストをすることが重要です。注文フロー、在庫連携、データ連携、帳票出力など機能が正確に動作するかをチェックし、表示崩れや操作性に問題がないかも確認しましょう。
5. 公開する
テストに問題がなければ、商品情報や取引先情報などの必要なデータを移行して、サイトを公開します。公開直後はアクセス状況や受発注、在庫連携などが動作しているかを重点的に確認しましょう。また、運用開始後は、運用データをもとに分析や改善を継続的に行うことが重要です。必要に応じて機能を追加したりUIを変更したりと、改善を繰り返すことで、業務効率化や売り上げ拡大につながるECサイトを実現できます。
B2B家具ECサイトの事例
KANADEMONO for BUSINESS
D2C家具ブランドのKANADEMONOは、Shopify PlusのB2B機能「Shopify B2B」を使って、法人向けストア「KANADEMONO for BUSINESS」を構築しました。商品の選定、提案、購入、納品までを一貫して進められる仕組みを導入したほか、請求書払いや見積もり、卸売取引にも対応しています。その結果、B2B ECサイト導入前と比べて、B2Bの顧客数を10倍、平均月間売上を3.4倍増加することに成功しています。
フランスベッド
宿泊施設や医療施設向けに寝具を展開しているフランスベッドは、ECパッケージシステムを活用してB2B向けECサイトを構築しました。当時、受注業務を手作業で行っていた同社では、作業量が業務を圧迫し、人為的なミスが発生していました。EC化を進めたことで、1受注あたりの業務時間を大幅に削減することに成功しました。また、24時間365日受注が可能になったことで、顧客の利便性が向上し、優れた顧客体験の提供にもつながっています。
オフィス空間Online
株式会社オフィス空間では、業務用家具の販売に特化したB2B ECサイト「オフィス空間Online」を運営しています。同社はB2B向け商品の案内にカタログを使用していましたが、ページ数に限りがあるため、商品のバリエーションをすべて掲載できないという課題を抱えていました。
EC化を進めたことで、異なるカラーやサイズの商品も1つのページに掲載できるようになり、顧客はページ遷移することなく、カラーやサイズの変更、オプションの追加を行えるようになりました。こうした操作性の高さに加えて、メールや電話による問い合わせなしに購入に進める利便性も実現し、購買体験の向上につなげています。
まとめ
B2B家具市場は現在、対面中心の取引からECを軸としたデジタル取引へと移行が進んでいます。ハイブリッドワークが普及したことに加えて、ミレニアル世代やZ世代が購買担当の主軸となった今、この流れはますます加速していくと予想されます。
こうした背景から、B2B家具市場で競争力を高め、売り上げ向上につなげるには、EC化が不可欠です。自社に最適なECプラットフォームを選択するには、コストに加えて、拡張性やカスタマイズ性、機能性を中心に比較検討することが重要です。最新の在庫状況やAR機能など、顧客の購買意欲を高める機能のほかに、マーケティング施策を自動化できる機能が導入されたECプラットフォームを選ぶことで、効率的に家具B2B ECの運営が可能になります。
Shopifyでは、B2B家具のEC化に活用できる多数の機能を提供しています。無料体験も利用できるので、ぜひご活用ください。
B2B家具に関するよくある質問
B2B家具の市場規模は?
世界のオフィス家具小売市場は、2025年に781億米ドルに達し、2030年までに1,090億円へと成長すると予想されています。ハイブリッドワークが普及したほか、従業員のウェルビーイング向上を目的としたオフィス環境への投資が増加しており、今後も市場規模は拡大していくと予想されています。
B2B家具ECサイトを運営するのにいくらかかる?
家具ブランドのB2B ECを構築するのにかかる必要は、使用するサービスにより異なります。ASP型ECの場合は月額費用が数万円~数十万円なのに対し、一から作り上げるフルスクラッチの場合は数百万円以上になるケースもあります。自社の事業規模や予算に合わせた運営が重要です。
B2B家具のECプラットフォームを選ぶポイントは?
- 初期費用や月額使用料などを含めた総所有コストをチェックする
- 取引規模の拡大や自社の事業内容に応じた運用ができるかを確認する
- 在庫管理や顧客管理、配送設定など家具B2B ECで必要な機能があるか、使いやすいUIかどうかを確認する




